スカーレット (第35回・2019/11/8) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第6週『自分で決めた道』の
『第35回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
大阪の暮らしに別れを告げ、信楽に戻った喜美子(戸田恵梨香)。父の常治(北村一輝)と仲直りして川原家に久しぶりの平穏が訪れる。喜美子は反発する妹の直子(桜庭ななみ)をなだめつつ、実家の借金を返すため、地元で一番の陶芸会社で働き始める。仕事は社員食堂のお手伝い。大阪での仕事に比べてあまりにも簡単で、物足りなさを感じる喜美子。ある日、初めて見た絵付け火鉢に目を奪われ、立ち入り禁止の作業場に入ってしまい…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
今回のアバンの違和感にだけ、ひとこと言わせて!(その1)
今回のアバンタイトル、正直一度観ただけでは不可解過ぎて分からなかった。だって、前回のラストは「喜美子が大阪を出る → ちや子が喜美子の残したレシピでが茶漬けを作り食べる → 信楽の実家に付いた翌朝(だろう)妹たちを学校に見送る」と、ここまで描かれた。
でも、今回のアバンで描かれたのは「喜美子が大阪を出る → 大きな荷物を持って信楽の山道を歩く喜美子 → 「ただいま」と初めて信楽の実家に着いて母の初驚き → 夕方、既に家事を始めている喜美子と帰宅して来た父が初再会 → 既にかなり馴染んでいる喜美子と母と妹たち」だった。
今回のアバンの違和感にだけ、ひとこと言わせて!(その2)
これ、普通に観たらおかしいと思わないだろうか? 今回のアバンって、前回のラストで言うと「喜美子が大阪を出る → 【ここか…】 → ちや子が喜美子の残したレシピでが茶漬けを作り食べる → 【ここ】 → 信楽の実家に付いた翌朝(だろう)妹たちを学校に見送る」の印象だ。
そう、時間軸が戻っていると言うか、順番が正しくないと言うか、変。でも、3回ほど録画を観なおして、こう考えることにした。「父の常治は毎日家に帰って来る訳ではない」と。「常治は喜美子が帰って来た日は不在で、喜美子が帰郷して数日(喜美子が直子に弁当を渡した翌日の夕方でも良い)に帰って来て、やっと再会」と思うことにした。
今回のアバンの違和感にだけ、ひとこと言わせて!(その3)
なぜ、こんな編集をしたのか分からない。気にならない人は良いが、気になる人は気になる。少なくとも私が気付くのだから、放映前の事前チェックで気付くスタッフは居たはず。この違和感を映像はそのままで消すのは超簡単。
「喜美子の父・常治は 2日ぶりに家に帰って来ました」と言うナレーションを、オート三輪から降りる父の常治(北村一輝)のカットに被せるだけ。そうすれば、「弁当の日の夕方か」とも思えるし、常治もそれなりに仕事をしているのだと言うことも描けた。前回が凄く良かっただけに、残念だし勿体ないアバンだった…
喜美子を中心に "川原家に久し振りの平穏" が訪れた!
とまあ、気になる私だけ気になる部分の感想はこれ位にしよう。
で、時間軸以外のアバンは中々良かった。既に主人公の喜美子(戸田恵梨香)が一番上のお姉ちゃんとして、親に反発していたすぐ下の妹の直子(桜庭ななみ)をなだめて “三姉妹は仲良し” で、父に「これからは お酒は 週末だけにしよな?」と提案して、でんと構えた貴美子の存在感に常治も圧倒されてしどろもどろで、喜美子を中心に “川原家に久し振りの平穏” が訪れた。
嬉しさを隠せない常治の夕景シーンの演出を、ちょい解説…
家の外に出た常治に夕日が射して、そこへ遠くの寺の鐘の音、嬉しさを隠せない常治と、そんな常治を微笑んで見守る 母・マツ(富田靖子)。夕日に鐘の音だと、普通は寂し気な印象になるのに、どうして寂しさが無かったのか? 多分、こんな演出の仕掛けがあったからだと思う。
常治が家を出る直前の家の中のシーンの劇伴の編集の妙だ。今回のアバンはほぼ冒頭からアコギと木管楽器(だと思う)中心の柔らかな雰囲気の劇伴が流れている。これが“三姉妹は仲良し”と “川原家に久し振りの平穏” を象徴している訳だが、常治が家を出る数カット前で14秒も前の喜美子の「もう帰らへんよ うちの家は ここや」の台詞の途中でフェードアウトさせた。
この編集で、この喜美子の前向きで決意がこもった台詞と映像が視聴者に強く印象付けられたために、14秒後のカラスの鳴き声と鐘の音と夕日が3つ重なっても、寂しくも無ければ切なさも無い。ここの演出家の音と映像の編集はお見事だ。だから、なぜアバンでは… 止めておこう。2分10秒のアバン、良しとしよう!
川原家の平穏に、大久保の教えが活かされているのが素敵だ
主題歌明けも、中心的に描かれるのは “川原家に久し振りの平穏” と喜美子の “長女としての責任感や役割” で、そこへ “反抗期の直子” が加わる。
これ、ちゃんと喜美子が荒木荘で学んだ「食べ物や食事の時間を大切にすること」や「好きなものを食べる重要さ」や「一つ屋根の下で暮らす人たちには、“要” になる人が重要(荒木荘の大久保のような)」と言うのを、喜美子が実家で体現し、更にそれが “家族の輪” になって行く過程に反映されているのが良い。
常治の仕事の現状と、マツの病状も "ナレ" で補強したら…
ただ、残念なのは、常治の仕事がどんなものでどんな状況なのか、マツの病状はどうなのかが、映像的にスルーされていること。だから、前述の通りの作戦で、「常治の仕事は ここ最近やっと順調になり マツの病気も治療の甲斐あって 良くなって来ています」と談話の中にナレーションで入れれば良かった。
でも、まだまだ修正可能な範囲。脚本家と演出家で、もっと密に連携しナレーション録音までに修正すれば良いだけのこと。この1か月を観た限りでは、本作のスタッフなら出来ると思う。
喜美子の初出勤が、あっさりめで始まったのが良かった
さて、6分過ぎには年が明け、ここでは「約束どおり 丸熊陶業で雇ってもらえる手はずが整い…」と的確なナレーションで始まった。
映像的にも出だしはオーソドックスだが丁寧だ。丸熊陶業の全景カットに、親子三人の後姿、オート三輪を奥から走らせて三人の手前を大きく横切って三人の顔が見えて来る緊張感漂う表情には、明るめの劇伴を合わせ、テンポ良く社内のシーンに繋げて、番頭の加山(田中章)の会社説明。
その後もサクサクと喜美子の幼馴染・熊谷照子(大島優子)の父で社長の秀男(阪田マサノブ)と照子の母・和歌子(未知やすえ)が登場し、僅かな時間で丸熊陶業がどんな会社で、川原家と熊谷家の関係や、映像には映っていない照子の現状報告まで、薄っすらと見えて来た。
幾ら、「荒木荘編」が終わって、「丸熊陶業編」が始まったとは言え、まだその1回目の半分。この程度のあっさりしたさじ加減が良いと思う。
3年前の内定取り消しが秀男の心にも残っていてホッと…
そして、社長の秀男から、喜美子の仕事の内容が告げられる。番頭の加山の「えづけ」の単語に即反応した喜美子も良かったし、3年前の内定取り消しが秀男の心にも残っていたのが、なんか朝ドラらしくてホッとした。
そして、ここでの「喜美子は 新しい仕事に早く就きたくて うずうずしていました」のナレーションでの喜美子の心の高ぶりの補強も上手く行っていた。この位なら満足度が高い。
初出勤の緊張感とマフラーの引っ張り合いに"期待"が見えた
で、8分過ぎには翌朝で、早朝らしい清々しい信楽の風景カットに続いて、常治が既に家の外で喜美子の初出勤を見送る準備態勢。劇伴のちょっぴり戦闘態勢の気分を醸し出す選曲になっており、敢えて盛り上げた緊張感を、喜美子のマフラーを両側から常治とマツが引っ張って苦しむ喜美子のコミカルな映像で中和した。
こんな緩急の付け方を見ると、ついつい荒木荘での楽しいやり取りを思い出してしまう。と言うことは、この「丸熊陶業編」でも期待できると言うことだ。
大久保から教わった"女中と言う仕事のプライド"が描かれた
そして、私の思ったより早かったのが、先日も書いたが、荒木荘での女中仕事より簡単な丸熊陶業の仕事の合間に「えづけ」に興味を抱くタイミング。数日間は働いたのちに、たまた絵付けされた陶器に惹かれて、勝手に作業場に入って怒られる…と思ったのだ。でも実際は、初出勤の放送回の12分には訪れた。
美しく絵付けされた陶器に魅入られて、自分勝手にこっそり…と言うのでなく、あくまでもヤカンを入れ替える仕事の一環の中で「絵付係」の作業場に入るのは、とても良い展開。やはり、喜美子は3年間で成長したのだ。大久保から教わった “女中と言う仕事のプライド” がきちんと生かされたエピソードと言う訳。いいぞ!
この15分間で "先" が見たくなる朝ドラ復活の兆しが見えた
終盤では、先日登場した城崎剛造(渋谷天外)が現れて絵付け仕事の緊張感、夜の川原家では眠れない喜美子で心の高ぶり。悪くない…と言うか、また “先” が見たくなる朝ドラに復活の兆しだ!
あとがき
アバンタイトルの違和感以外は、『スカーレット』らしい奇を衒わずに、映像を積み重ねて物語を紡ぐことが継承されていますね。あとは、一気に増えるであろう新しい登場人物たちに喜美子が埋もれないか、群像劇や騒動続きで箇条書き状態にならないか…が心配事ですね。でも、今のところは大丈夫そうです。
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