スカーレット (第34回・2019/11/7) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第6週『自分で決めた道』の
『第34回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
喜美子(戸田恵梨香)は実家の厳しい状況に決意を固めて大阪に戻る。出迎えた荒木荘の仲間たちに、喜美子は美術学校に通う夢を諦め、女中の仕事も辞め、実家に戻ることを告げる。翌日、世話になった人たちに別れの挨拶をすますも、夢を応援してくれた新聞記者のちや子(水野美紀)には会えずじまい。喜美子は最近、ちや子が仕事を辞めて、自暴自棄になった話を聞き、ちや子に宛てた手紙を残す。数日後ちや子が受け取った手紙には…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
まえがき
前回の感想では「一身上の都合」と書くのに留めましたが、本当の理由は『今朝、最愛の母が亡くなりました…』の通りです。訃報が届いてから、ちょうど丸1日が経ちました。まだ、現実かどうかピンと来ません。でも、多くの読者さんが応援して下さるので本当に嬉しいです。ありがとうございます。
多くの視聴者の懸念材料で改善要求箇所の突破口かも!?
前回の感想は、母の訃報が届いた直後で心の整理が出来ずぬまま投稿したから、書き加えるべき部分を省いてしまったから、今回はまずそこから書いてみる。そして、これから書く部分が、恐らく今後の展開の成功、う~ん、もしかしたら今現在で多くの視聴者の懸念材料であり改善要求箇所を解消する突破口になるかも知れない。
だから書いておく。前回の9分頃、喜美子(戸田恵梨香)と母・マツ(富田靖子)の会話の中で、こんな母と娘のやり取りがあった。
マ ツ「照ちゃんとこの丸熊陶業 盛況でな。
若い人募集してるんよ 雑用の仕事やけど」
喜美子「そうなん?」
マ ツ「ほしたら 今度こそ 喜美子 雇てもらえる言うてな」
喜美子「18歳の女でも…?」
マ ツ「せや それで お父ちゃん その気になったんよ」
常 治「(回想)喜美子が信楽帰ってきてな…
丸熊陶業で これ… 働けたらええわな」
マ ツ「(回想)そんな うまいこと」
常 治「(回想)うまいこと言うてくるわ! 待っとれ!」
この両親のやり取りを聞いた直後の喜美子は、少し考えた様子で、「これ飲んだら行くわ」と大阪の荒木荘に戻って行く。ここだけ抽出すると、都合の良い話ではあるし、常治が裏でまた何かを企んでいるかも知れないと言う疑念も湧くが、ただ、常治もマツも喜美子に信楽に帰ってきて欲しい、一緒に暮らしたいと言う気持ちはギリギリ伝わる。
そして、喜美子も事情さえ整えば、信楽で家族と暮らしたい気持ちはある。更に前回では、妹の直子(桜庭ななみ)と一番下の妹・百合子(住田萌乃)を上手く絡めて、借金し過ぎ且つ翻弄し過ぎの常治と、そんな夫に何も言わず喜美子に頼るだけのマツを、何とか “少しはマシな両親” に描くことに成功した(と思う)。
もう、こう言うのをどんどん物語に放り込んで行かないと、本作は「信楽パート」になった途端に尻すぼみになると思う。
"荒木荘の住人以外の喜美子の仲間たち"で3年を振り返った
さて、今回の感想。主題歌明けは荒木荘。信楽での話をする喜美子を囲む、さだ(羽野晶紀)と雄太郎(木本武宏)と元女中の大久保(三林京子)で始まった。そして、美術学校進学を諦めて、その準備金を実家の借金返済に充て、荒木荘を辞めて信楽に帰る決心をしたことを話す。
喜美子が荒木荘での3年間を振り返る場面に、喜美子が大久保に叱られながら女中の仕事を覚えてる姿や、一人間になってテキパキと仕事をする喜美子の姿を利用せずに、荒木荘のあちこちの鍋や蛇口や風に揺れるカーテンなどの “荒木荘の住人以外の喜美子の仲間たち” のカットで描いたのが良かった。
「モノ」と「人間」で描けることの違いを見事に使い分けた
そして、“荒木荘の住人以外の喜美子の仲間たち” のカットに、喜美子の決断を受け入れるしかない “荒木荘の住人たち” の神妙な面持ちのカットが直結。「モノ」だから描ける “いつもと変わらぬ様子” と、「人間」でなければ描けない “揺れ動く感情” を見事に使い分けた。
「かまへん」と笑顔で送り出す荒木荘の住人たちに絞り込んだ
更に見事だったのは、女中と言う仕事を大久保に一人前として認められる前に辞めざるを得なくなった喜美子の無念な気持ちを察し、3年間黙っていた気持ちを大久保が吐露する場面だ。
大久保「認める認めんで言うたら… あの時やん…」
さ だ「何?」
大久保「…あの時や」
さ だ「何よぉ?」
大久保「『大久保さんが作ったごはんは
大久保さんにしかできへんのんちゃう?』
って言われた時に もう認めてたわ」
さだ「もう… そんなん最初の日やんか」
ここの演出も良かった。敢えて、女中の初日の映像を回想でインサートしなかったことで、そのシーンを観ていた視聴者だけが「あの時ね…」と連ドラの醍醐味を味わえる。まあ、普通ならインサートするのが親切なドラマづくりなのは間違いない。しかし、この演出家はそれを選ばなかった。
そして、ただただ、信楽に戻る喜美子を「かまへん かまへん」と笑顔で応援して送り出そうとする住人たちを描いた。
新聞記者のちや子(水野美紀)が応援団にいない脚本や、こう言う割り切った演出は好みが分かれるが、何が何でも情報過多なのは面白味に欠けると思う。特に、ちや子は男性社会で働く女性として、今後の喜美子と関わりそうな登場人物だから、敢えての別扱いも私は納得出来た。
ちや子だけ別扱いにした脚本と演出のさじ加減が良かった
「想像するだけで 楽しくて ワクワクする道」を捨てて、「自分が どうなっていくか想像つかへん…道」を自分で選んだことを認めた手紙と、「挿絵入りのちや子さんの茶漬けレシピ」を遺して信楽に帰った喜美子。それを、久し振りに荒木荘に帰って来たちや子が、手紙を読んだあとに、泣きながら茶漬けを作る。
手紙の文面は喜美子のナレーション処理。ここは直前のシーンとは真逆の定番の脚本と演出で、何となく喜美子とちや子が “先” で繋がるであろうことを暗示させた。この位のさらりとしたさじ加減が丁度良いと思う。
ラストシーンに、また「例の四角形の構図」が活かされた!
そして、今回のラストシーンは、列車で信楽に帰る喜美子も、喜美子を迎える川原家の家族たちのカットも一切なくて、ちや子の切ない背中のカットから、広々とした信楽の街の全景へ。
そして、場面は既に翌朝(だと思う)で、百合子は学校へ走って出掛け、喜美子が割烹着を着て、朝から不貞腐れた表情の妹の直子に弁当を手渡すカット。喜美子は黙って出て行く直子に「何か言いなさい」と促して、直子はボソッと「行って来ます」と出て行く。
そして、またあったね。例の構図のカットが。当blogの読者さんなら “耳にタコ” かも知れないが、画面の手前を大きく襖や扉で覆って、画面の奥の小さな明かりに当たる四角い部分に喜美子を配置して、喜美子の心情を描く構図だ。
ここでは、下手(画面左)の手前の扉に朝だから斜めに当たる日差しと、奥の喜美子にも斜めに当たる日差しを合わせて、まず奥行き感を出すと共に、「自分が どうなっていくか想像つかへん…道」に一筋の光が射しているのは間違いない…ことを照明で表現したと思う。やはり、この構図は本作の肝に登場するようだ。
あとがき
今回でも、信楽のシーンはあったのに、アバン以外では常治とマツの出番はありませんでした。やはり、ここ暫くの間の “鬼門” は「常治とマツ」だと思います。この夫婦を変人だけど共感出来なくもない程度に変えないと、今後の展開に常に「あの両親さえいなければ」となりかねません。
ただ、希望は喜美子が社会に出て3年経過していること。今の喜美子なら両親に言えることがあるはずです。そこに期待しようと思います。でないと、いつまで経っても「あの両親では喜美子が可哀そう」と言う共感や応援だけになってしまい、本来の喜美子が進む道を応援するのとは違ってしまうからです。
|
|
|
|
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
緋色のマドンナ: 陶芸家・神山清子物語
火火 [DVD]
スカーレット ノベライズ上巻
連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/13443/