スカーレット (第32回・2019/11/5) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第6週『自分で決めた道』の
『第32回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
喜美子(戸田恵梨香)の帰郷を聞きつけた仲間たちが集まって大宴会。父・常治(北村一輝)が荒木荘に喜美子が辞める連絡をしたことがわかり、喜美子は大阪で働きながら、美術学校に行く夢を明かす。しかし川原家に響く不協和音を治める役目を喜美子に期待する常治は頑として認めない。喜美子も折れず、仲たがいしたまま翌日を迎える。再び大阪に戻るつもりで家を出た喜美子。道中、信作(林遣都)と出くわし、驚きの事実を聞く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
今回のアバンを見て、ちょっと不安になって来た…
今週から、演出担当が朝ドラの演出経験は少々足りない、本作では3人目の鈴木航氏へ交代し不安はあったものの、アバンタイトルから最後までしっかりと描いていたから心配無用と書いたのだが、今回のアバンを見て、ちょっと不安になって来た。
流石に、ただ前回のダイジェスト版を組み立てただけで、ちょっと呆気に取られてしまった。本作の良い所の1つに “先” が見たくなる仕掛け…がある。でも、このアバンでは、如何にも「前日が三連休の最終日で見ていない人用」でしかなかった。主題歌明けの巻き返しを期待するか。
主題歌明けも、前回で使用済みのシーンから始まった…
さて、主題歌明けも、なんと、前回で使用済みのシーンから始まった。それも、1分近くも。こう言うのはハッキリ言う、頂けない。こちらは、話が進むのを期待して観ているのだから、やるなら多少尺が長くなってもアバンでやるべき。
中盤まで、コミカルな台詞回しと演出をやり過ぎて…
漸く物語が動き出したのが、4分過ぎのフルートの劇伴と共に、喜美子(戸田恵梨香)が母のマツ(富田靖子)へジョージ富士川(西川貴教)の話をし始めた頃。やはり、荒木荘のパートに一区切りをつけて「新章」が始まる予感を漂わせて、ほぼ完璧に今週に繋げた、先週と先々週の完成度に比べると劣る。
特に、たかが…と言っては何だが、視聴者は十分な位に知っている「美術学校への入学」と「草間との再会」を、確かに知らないマツと父の常治(北村一輝)に初めて喜美子が話すシーンだから、それなりに尺を取りたいのは分かる。
分かるが、明らかに引っ張っているように見えたし、コミカルな台詞回しと演出をやり過ぎて、それでなくても好感度が高くない常治とマツのクズ親っぷりが際立っちゃった。流石に、5分もコミカルをやって、9分過ぎにピアノソロでシリアス展開に飾ろうとしても、ちょっと無理があると思う。
9分過ぎの喜美子「ずっと信楽にいたい!」の回想が良かった
ただ、9分過ぎの3年前の喜美子が風呂の火を調節しつつ泣きながら「ずっと信楽にいたい! お父ちゃんとお母ちゃんと…みんなと… みんなと ここで暮らしたい!」と言った回想シーンから、雰囲気が一変した。前回で若干モヤモヤしていた「3年間の時間経過」が、この回想シーンと次の喜美子の台詞で繋がった。
喜美子「あのころとは ちゃうよ…
もう あのころの喜美子とは ちゃうよ…? お父ちゃん」
こう言う台詞が欲しいのだ。ちゃんと台詞と映像で描く。喜美子は生活が変わったお陰で、性格とまでは言わないまでも考え方が変わった。しかし、常治の横暴ぶりも、マツの頼りなさは変わらない。だから「3年間の時間経過」が見えて来た。こう言うのを積み重ねて来たのが本作。どうか、このまま進んで欲しい。
百合子を学校に行くよう諭した"成長した喜美子"が良かった
さて、10分過ぎ、前回で描かれた 思春期の直子(桜庭ななみ)の反発が原因の川原家に響く不協和音を静める役目を喜美子に押し付けようとする常治と、自分の夢を諦めない喜美子が、仲違いしたまま翌朝を迎えた。そして、再び大阪に戻ろうと家を出た喜美子に、走り寄る喜美子の一番下の妹・百合子(住田萌乃)。
学校と違う方向に歩く百合子は「病院行くねん。お母ちゃんの貧血の薬もらいに。夏に倒れやってん」と喜美子に教える。喜美子は百合子に学校へ行くように言い、自分が汽車を1つ遅らせて取りに行くから百合子は学校に行くように諭す。この辺りは、3年前の喜美子と違うって描写で良い感じ。
12分過ぎから、ドラマは一気にシリアス展開へ!
で、12分過ぎからの、次の百合子と喜美子のやり取りから、ドラマは一気にシリアス展開へ。
百合子「喜美子姉ちゃんは 大人?」
喜美子「うん…?」
百合子「うちは 子どもや。喜美子姉ちゃんは 子どもちゃうやんな?」
喜美子「うん」
百合子「大人はあかんねん」
喜美子「えっ?」
直 子「やっぱり いた。百合子!
余計なこと言うな言われてるやろ!? さっさと行かいさ」
百合子「うん」
喜美子「ちょっと待って? 余計なことて 何?
病院 大人はあかんて どういうこと? どういう意味?
直子? もう 何? 何 隠してんの? 言うてえや!」
直 子「はあ… 余計なことやで? 言うな言われてることやで?」
喜美子「ええから言いなさい!」
ここの台詞のやり取り、すっごく焦らせるね。こう言うのは好みが分かれる会話のやり取りだが、三姉妹の年の差や家族の中での役割が、きちんと表現されており、私はこの位は焦らした方が、次に登場する信作(林遣都)の役割が強調されて良いと思う。
信作の言葉で "ほぼ全容が見えて終わる展開" も悪くない
そして、13分過ぎ。三姉妹のやり取りの中に、登校途中の信作が通り掛かる。そして、病院へ薬を取りに行くのが “大人” ではいけない理由が明かされる。
信 作「(百合子と直子に)俺から話したら 叱られへんよな?」
百合子「…」
直 子「…」
喜美子「ええから 話して?」
信 作「病院のツケたまってんねん」
喜美子「ツケ?」 信 作「支払いや。大人が行ったら
『川原さん ええ加減 お金払て下さい』言われんねん。
百合子 子どもやろ? 子どもやったらしゃあない
子どもに言うても しゃあないて。
逆にな 学校も行かんと
薬取りに来るやなんて かわいそうな子やないうて
それで 薬くれやんねん そやし 百合子やないと あかんねんな?
まあ いろいろあるわな。3年もおらんかったら」
なぜ、先週末まで、喜美子の人生は意外な程に好転していたのに、週末の最後に常治が「マツが倒れた」と嘘をつき、喜美子を信楽に帰らせ、大阪には戻させないと頑固だった理由が知りたかったから、今回は信作の言葉で、ほぼほぼ全容が見えて終わる…と言う、この展開はしょうがない。
さあて、ここからが脚本家と演出家の "腕の見せ所" だ!
さあて、ここからが脚本家と演出家の腕の見せ所だと思う。信作が言ったように「3年おらんかった」が、このエピソードの肝だ。3年前は経済的に苦しい川原家を救うために、中卒で地元企業に就職しようとしたのが失敗して、大阪に働きに出ると言う「家族離れ離れ」の答えしかなかった。
しかし、喜美子は3年間で変わった。その変わった喜美子が、今度は自分自身で、どんな選択をするのか? そこに、ドラマとしての “説得力” を持たせられるかが、大きな鍵になると思う。だって、ここでの “説得力” は “喜美子の人生を切り開いて行く力” があるかどうかを決めるのと同じことだから。
喜美子の選択肢に"説得力"があれば、この先も安泰だと思う
ここで喜美子の選択肢に説得力を持たせることが出来れば、朝ドラのヒロインとして、自らの人生を切り開いて行くストーリーに説得力も出るし、これまでの展開とも辻褄が合う。しかし、もしも「なぜ、喜美子は大阪から信楽に戻るの?」とか「どうして、喜美子は大阪に居続けるの?」となれば、物語の説得力に大きく影響する。
恐らく、私は信楽に帰る選択をすると思うが、そうなれば、荒木荘の住人たちが引き留めるのか応援するのかの描写も大変重要になる。とにかく、ここを上手く乗り切って欲しい。そして、これが喜美子の「信楽焼職人」への道へのプロローグならば、絶対に失敗しないで欲しい…
あとがき
最初の1か月間、秀作の予感で来て、第5週の序盤で、最初の山場がやって来た…そんな感じですね。今週のサブタイトルが『自分で決めた道』ですから、何となく予想は出来ますが、感想の本文に書いたように重要なのは、展開の “説得力” です。
大丈夫だとは思いますが、常治とマツが登場すると雑になる傾向が無くもないので、じっくりと見守りたいと思います。
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