「防災用の薬の備えは何日分?」を大学の薬学部長さんに聞いてみた

宮城県薬剤師会が開発した移動薬局車両「モバイルファーマシー」
©alterna ※無断借用

日本ウーマナンズヘスル学会のディレクターのお手伝いをした時のお話…

2019年8月10日(日)、早稲田にあるリーガロイヤルホテル東京で開催された「第18回 日本ウーマンズヘルス学会 学術集会」の進行運営のディレクターとしてお手伝いした際の話。

テーマは『自然災害時の危機管理-女性と子どもへのかかわり』

千葉科学大学看護学部看護学科・村山より子教授を大会長にした今年のテーマは『自然災害時の危機管理-女性と子どもへのかかわり』。 近年、東日本大震災を始め、熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振東部地震、広島市の豪雨による土砂災害、関東・東北豪雨による鬼怒川で堤防決壊などの自然災害に日本は毎年のように見舞われるようになった。

それは、日本だけでなく世界規模で甚大な被害をもたらす自然災害が起っており、その災害現場では、男性には気づき難い、女性と子どもならではの多様で深刻且つ切実な問題や課題が存在すると言う視点で設定されたテーマだ。

そもそも、日本ウーマンズヘルス学会は、 女性が生涯を通じて男性とは異なる身体的・心理的・社会的な健康問題を保健、看護、研究、教育、臨床の観点から、 その進歩や発展と普及に貢献することを目的に活動しており、今年は様々な立場の専門家を招いて基調講演やシンポジウムが行われた。

シンポジウム『避難時における危機管理』の
CIS/薬学部部長/細川教授の『避難時における薬について』

もちろん、私は全体の進行・運営管理をする立場で、医療や災害の専門家でもない。しかし、今回の『避難時における危機管理』と題されたシンポジウムのパネラーのお一人で、千葉科学大学(CIS) 薬学部部長 細川正清教授の講演『避難時における薬について』に、とても興味を持った。

日本ウーマンズヘルス学会
©テーマが自然災害時の危機管理、女性と子どもへのかかわりの日本ウーマンズヘルス学会

その理由は、私が高血圧等の複数の慢性疾患を患っており、それらの治療に複数の飲み薬を毎日数種類飲む生活をしているため、実際の災害発生時のために、どの位の量の薬を「予備薬」として保管しておくべきか? を直接伺いたかったから。

災害用常備薬は「1か月分位は確保しておくと安心」だそう

懇親会で、私は細川教授へおもむろに「私、医療関係者でないのでズバリ伺います。毎日飲まない薬は万が一のために何日分確保しておけば良いか教えて下さい」と。ここからの話は、若干二人共(私は懇親会は仕事でないので)お酒が入っている状態での内容だから、若干間違っている部分もあるかも知れないが、その際のメモを基に書いてみる。

薬剤師の業界では知らない人はいないと言う、薬学の専門家・細川教授の話によれば、「出来れば1か月分くらいは確保しておくと安心」とのことだった。確かに、実際に私が通院する某大学病院の主治医も、3か月毎の定期検査で、「今、何日分、薬の余裕がありますか?」と必ず聞いてくれる。

そして、私が「10日分くらいあります」と言うと、「では、今回で1週間分、3か月後の診察でもう1週間分のストックを作りましょう」と言ってくれる。やはり、主治医やかかりつけ医と相談して、自分の身を守るために、常備薬も万が一に備えるべきなのだ。

理想と国と現場の考え方が違うから、自己責任で準備すべき

ただ、近所のかかりつけ薬局の薬剤師に細川教授へと同じ質問をすると、「持病があって薬を飲んでいる方の常備薬の備えは “3日分” です」との答えが返って来た。

その理由は、災害が発生してからの最初の3日間「超急性期」は、外部から支援が来るのが難しく、災害が発生した地域に残されている薬で、ギリギリやり繰りするしかないからだそう。4日目からは、いろいろな支援が動き出すと思う…とのことだった。

因みに、首相官邸のホームページでは、「大規模災害発生時には、「1週間分」の備蓄が望ましいとされています」と書かれている。もう、この時点で理想と国と現場の考え方が違うのだ。

だから、例えば心臓や喘息の発作予防に使う、命にかかわるような大切な薬 “常備薬” が必要な人は当然のこと、降圧剤や眠剤なども、自分で大災害に向けて準備しておくのが賢いと思う。

2011年の東日本大震災では "医師しか" 薬を出せなかった

更にそこから話が進む。実は、 2011年(平成23年)に発生した東日本大震災の時は、被災地での医薬品供給体制がほぼ壊滅した。

また、発生からしばらく時間が経って、薬が少しずつ被災地に届くようになったらなったで、今度は毎日薬を飲まなければいけない患者さんたちが、例え薬があっても「医師」がその場で処方しなければ薬を出して貰えなかったそうだ。

2016年の熊本地震では移動薬局車両「モバイルファーマシー」が大活躍

そして、 2016年(平成28年)に発生した熊本地震では、東日本大震災の教訓を活かして、 宮城県薬剤師会が開発した移動薬局車両「モバイルファーマシー」が熊本地震の被災地で初めて活用され、救護活動に成果をあげたそう。

【参考リンク】
薬剤師会が開発した「移動薬局」が熊本地震で活躍 - オルタナ:サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」

熊本地震で医師以外に"薬剤師も薬が出せる革命"が起きた!

しかし、その所謂「走る薬局カー」も画期的だが、細川教授によれば、熊本地震では薬剤師にとって、革命と言って良いような出来事が起こったそうだ。

それが、患者さんが「おくすり手帳」や「薬のメモ」を持っていれば、「医師」がいなくても、「薬剤師」の判断で薬を調剤して提供することが可能になったこと。そう、これまで「薬を出せるのは “医師” だけ」と言う壁が崩壊したのだ。

医療現場には様々な資格を持った「師」がいる。そして、それは「医師」を頂点にし、「看護師」や「薬剤師」や「〇〇技師」などを下部組織としたピラミッド。そう、あの『白い巨塔』。それが、東日本大震災をきっかけに熊本地震で、僅かではあるが “崩壊した” と言う訳だ。

今後、看護師には"災害時にチームをまとめる力"も要求される!

そこで、今度は前述のシンポジウム『避難時における危機管理』の座長を務められ、元・ 東京女子医科大学 看護学部 学部長 で、現在は、いわき明星大学(現・医療創生大学) 看護学部 学部長である久米美代子教授に、細川教授と私のやり取りを話したら、看護教育のスペシャリストの久米教授から、こんな話が聞けた。

現在は、大災害が発生した時に、各地域に被災者医療支援チームのような組織が立ち上がった際に、トップは「医師」であることが多い。

でも今後は、病院に限定すれば患者に最も長時間接しているのは「看護師」で、最近は訪問看護などもあり地域の患者のことも知っている「看護師」が、その被災者医療支援チームのトップの役割を担っていくように、世の中は進んでいるそうだ。

従って、これから「看護師」になる学生には、災害支援ナース(災害支援ナースは、都道府県看護協会などが主催する一定の研修を受け、登録を行うことが必要で、国家資格ではない)のように災害発生時に被災者と常に向き合い、求められる看護活動が出来るだけでなく、「チームをまとめる力」も教えなくてはいけなくなるから、益々看護教育の現場も大きく変わるだろう…と。

早急に、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健師らが
各自の能力を最大限に発揮出来る仕組みの構築が必要だ

薬に頼らない身体と生活が一番良いのは分かっている。しかし、薬を飲めば普通の暮らしが出来る人も大勢いる。そんな見た目では判断できない病気を抱えた患者を、災害時に救う手段として、“薬” を「医師」だけに特化させずに、薬の専門家「薬剤師」にも分ける時代が来た。

そして、一日も早く、災害時に「看護師」や地域の「保健師」らが、もっと自身が持つ能力を最大限に発揮出来る “仕組み” こそ、50年に一度、100年、1000年に一度の災害が、またいつ起こっても不思議でない日本に必要な時代が来たような気がする。

あとがき

『白い巨塔』(山崎豊子著)では、教授を頂点にした大学病院(正確には病院ではなく、大学)のシステムは「ピラミッド」、「軍隊式」、「封建的」などと表現されますが、実際の医療現場は、「医師」を頂点としたピラミッド構造と言うことのようです。

医師不足、看護師不足が叫ばれている昨今、やはり古いシステムは見直して、現実に沿った新しいシステムに移行するべきだと思いました。私は、決して「医師」の存在を軽んじている訳ではありません。

「医師」、「看護師」、「薬剤師」、「保健師」ら医療に携わる資格を持った人たちを、どう効率良く配置し活動して貰うシステムを作るか? それには、一般市民の体験や疑問も大きく反映されて欲しいと思いました。

まさか、私が住んでいる千葉県北西部が、9月から10月にかけて、毎週末に台風等の災害に遭うとは思わなかったので、投稿が遅くなりました。本文中に登場した久米美代子教授に「早く、ブログに書いて!」と言われて急いで書いたので、医学・薬学・看護学的に正しくない表記があると思うので、飽くまでも素人の備忘録として読んで頂けると助かります。

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ くる天-人気ブログランキング


★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
はじめる とりくむ 災害薬学


★本家の記事のURL →  http://director.blog.shinobi.jp/Entry/13404/
関連記事
スポンサーサイト



トラックバック


楽天市場PR

TB送信について

一部のブログサービス(特に、FC2ブログ)宛に、FC2からトラックバックが届かないケースが発生中です。

最新記事

PR


カテゴリー+月別アーカイブ

 

検索フォーム

PR