スカーレット (第26回・2019/10/29) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第5週『ときめきは甘く苦く』の
『第26回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
喜美子(戸田恵梨香)の直談判の結果、圭介(溝端淳平)が恋するあき子(佐津川愛美)が荒木荘を訪ねてくる。突然の再会に舞い上がる圭介。だが喜美子の気持ちは沈むばかり。圭介はあき子に誘われるがまま外食に出かけて、喜美子は二人を見送る。その夜、ほろ酔いで帰宅した圭介を出迎える喜美子。「喜美ちゃんのおかげや」と感謝されるも、やはり素直に喜べない。喜美子は住人のちや子(水野美紀)から「それが恋や」と指摘され…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
戸田恵梨香さんの女優魂、恐るべし!
先日、ネット記事『戸田恵梨香、15歳役のため「5kg太った」』を読んで、31歳の自分が15歳を演じるのは無理があるから、出来る限りのことをして今の自分と外見を変えて若く見せるために、太り難い体質のため 5kg太るために 4か月も努力したことが明かされていた。
前作なら、このような記事は所謂「提灯記事」として一刀両断するのだが、前回でも使用され今回のアバンにもあった、歌声喫茶「さえずり」の前の道で、ちょっぴりお腹を突き出し仰け反り気味で呆然と立ち尽くす喜美子(戸田恵梨香)を見ると、5kgの体重増加は映像でしっかりと役立っているのが分かった。戸田恵梨香さんの女優魂、恐るべし!
新たなナレーションを加えて、アバンがプロローグになった
また、前回のラストで圭介(溝端淳平)が恋する あき子(佐津川愛美)が荒木荘を訪ねて来るのは既に描かれているのに…
敢えて今回のアバンで「この5文字に 何の効果もなかったのだと思いました。が…」と新たなナレーションを加えて再編集したことで、このアバンを単純な “前回のまとめ” とするのではなく、主題歌明けのドラマのための “プロローグ” に仕上げた。この辺の視聴者を飽きさせない工夫も見逃して欲しくない…
脇役の恋バナが主人公の恋バナに繋がりそうな展開が上手い
その主題歌明けは、朝ドラらしからぬヒロインの「はよ はよ! エロエロは置いといて」の台詞から始まった、喜美子と圭介の軽妙なコント。
コントとは言っても、相手の目をしっかりと見ながら会話をし、相手の身体に触れたり、しゃがんだり、互いの立ち位置をぐるりと変えたりしながら、肝心の あき子を玄関に待たせたまま、アルコールの匂いだ、キスだと、どんどん会話が盛り上がって行く。この盛り上がりをいつまでも続ける訳にはいかないから、何らかの手を使って止めるしかない。
まあ、普通なら中々戻って来ない喜美子に呆れた あき子が大声で呼ぶとか、勝手に入って来ちゃうなんて手もあったはずなのに、「喜美ちゃん ありがとう!」と突然圭介が喜美子に抱き着くと言う選択肢。驚く喜美子が描かれたことで、脇役の恋バナが主人公の恋バナに繋がりそうな雰囲気が漂った。毎度言うが、これが “先” を観たくさせる作戦なのだ。
何が起ころうと、喜美子が女中の仕事を全うするのが良い
でもって、先日の喜美子手づくりの “おはぎ” の話から、あき子が “あんこ嫌い” なのが分かり、そんな あき子に合わせるかのように「あ… せっかく作ってくれてはるから 食べてたっていうか…」の、喜美子にとっては衝撃的な圭介の一言で場面の空気は一転。
劇伴も、まるでドラマのクライマックスがやって来たような曲調に変わったが、特に喜美子が大きく落ち込むとか、あき子を憎むとかはない。あくまでも、荒木荘の女中としての仕事を全うする喜美子が描かれた。
圭介と あき子が外食するために夕方に荒木荘を出て行くのを笑顔で見送るのも、夜になって さだ(羽野晶紀)と ちや子(水野美紀)が帰って来ても、女中として さだに新しい料理のレシピを聞いて勉強熱心な喜美子が描かれる…と思ったら、なんと、まるで あき子に対抗心を燃やすようにハンバーグの作り方を教わっていた。
喜美子のさり気なく行った「これからは ハイカラなもんも 作ろうか思いまして」に、健気な喜美子に笑ってしまった。でも、ここでも、あき子に対抗心は強調せず、描くのは飽くまでも女中を全うする喜美子。この良い意味での大きな波風が立てない展開が、朝ドラらしくて心地良いのだ。
荒木荘の大人3人の会話劇が、す~っと心に入って来た
そして、今回の大きな見所だと思えたのが、6分過ぎからの さだと ちや子に雄太郎(木本武宏)が加わった、荒木荘の大人3人の会話の面白さと巧みさと、18歳の喜美子との関係の描き方。
最初に喜美子がいる前での大人3人での会話の内容は、まあ今日の出来事の報告的なこと。喜美子が台所に入り、大人3人になった時の会話の内容は、世間や仕事や見合いの話。で、3人の会話が圭介の恋バナになると喜美子の返事が返って来ないのを察知して、3人が目線だけを喜美子に向けるカットを入れた。
そのカットのお陰で会話を途切れさせず、恐らく喜美子が静かに “箸だけを動かしている音” を聞いて、3人は目線のやり取りだけの会話劇を描いた。静かなピアノソロの劇伴と相まって、大人3人が喜美子を気遣い、心配していることが、誰の目にも分かったと思う。
こう言う、相手の反応で微妙に会話が変わるのなんて、実際の日常では良くあること。でも、ついドラマになると、相手の台詞を待ったり説明したりと不自然になってしまうもの。しかし、今回の2分間ほどの会話劇は、実に丁寧に脚本が書かれ、演出され、演技で魅せたって感じ。
やっていることは単純でシンプルなのに、丁寧で無駄がないから、物語が す~っと心に入って来る。これ、凄いことだと思う。
絶妙な"間"で、三者三様の喜美子への優しさを丁寧に描いた
更に凄いのは、自室で手づくりの “はたき” を作っている最中に、靴は脱ぎっ放し、玄関も開けっ放しで帰宅した、気分上々で酔っ払い大声で話す圭介の対応し終えた喜美子の様子を感じ取って、絶妙な “間” を空けて、まずは雄太郎の、続いて さだの、最後に ちや子の、三者三様の喜美子への優しさを丁寧に描いた。
ドラマで良く見る「思春期の女子の初恋物語」とは違う完成度!
そして、大人3人の中では最も喜美子に年齢が近くて隣部屋の ちや子が、今の喜美子の感情が “恋” だと指摘する。そして、自分の気持ちが何だか分からずにいた喜美子が、ちや子の言葉で自分の感情を次々と整理していく様子を見て、落ち着いたトーンで「恋や。喜美ちゃん それが恋や」と繰り返す。
で、最後に自分の今の気持ちを「恋っちゅうのは おもろいなあ」と喜美子が締め括る。言ってしまえば、ドラマで度々見掛ける「思春期の女の子の初恋物語」の一頁なのだが、ここまで丁寧に描かれると、“ドラマで度々見掛ける” と言う修飾語は合っていない。お見事としか言いようのない 15分間だった。
あとがき
今回を含めて、最初の一か月にしては奇を衒うことなく、実に丁寧に人間を、人間観関係を描いていると思います。もはや、このあとに、喜美子がどうやって男社会の中に飛び込んで行って女性陶芸家になるのかなんて、どうでも良いと言うか、ただ「喜美子の生き様」が観たい…と思うようになりました。
でも、うがった見方をすれば、いつかは “先” で荒木荘から舞台が信楽に移る訳で、そこでも今のように登場人物たちにそれぞれ明確な役割を与えて、丁寧に描かるかが今後の課題になる訳です。でも、今のところは、ニュートラルな気持ちで楽しみます。
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