スカーレット (第23回・2019/10/25) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第4週『一人前になるまでは』の
『第23回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
昭和30年、荒木荘で働き始めて2年半、喜美子(戸田恵梨香)は18歳に。女中の仕事を一人で切り盛りする喜美子の悩みは住人の雄太郎(木本武宏)。すでに半年近くの家賃を滞納して下宿屋の運営に支障をきたし始めている。喜美子はしばらく姿を見せない雄太郎を捕まえようと待ち構える。さらに喜美子にはもう一つの悩みが。毎朝、目の前の道を通るコワモテ男だ。医学生の圭介(溝端淳平)に相談して見張っていると予想外の女性…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
朝ドラに"癒し"があるのを最近忘れていたのを思い出した…
前回のアバンタイトルが私の予想外のシーンで始まったことは書いたばかり。そして、今回は予想通りの、前回の見せ場の一つである「喜美子と常治の家族愛」のシーンで始まった『スカーレット』の第23回。
冒頭から話はズレるが、今朝の千葉県北西部は「警戒レベル3相当」が発令される程の大雨で、朝も早よから予約してあった病院の検査から、やっと戻って来たところ。だから、こんなホームドラマの何気ないシーンでも、今の状況や未だ被災している知り合いのことを思うと、ホッと出来る。
そよ風が吹いて気持ちの良さそうな商店街で、ヴァイオリンの音色の中で描かれた父と娘の “3年間だけの別れ” がホッとさせてくれた。
そして、満面の笑みで玄関の戸を開けて、「ただいま戻りました!」と大阪の実家とも言うべき荒木荘へ “帰宅” した喜美子(戸田恵梨香)を、カメラと視聴者は「荒木荘の住人目線」で見ることの嬉しさ。朝ドラには、こう言う癒しがあるのを最近忘れていたのを思い出した…
主題歌明けは前回以上の私の想定外のシーンから始まった
アバンに対して、主題歌明けは前回以上の私の想定外のシーンから始まった。商店街から帰宅した喜美子繋がりでなくて、いきなり昭和の時代を思わせる木製の枠に楕円形のブラウン管のテレビのアップ。内容は大相撲。テレビの周囲には木の枝や家の屋根が映っているから街頭テレビと言うやつだ。
そして「昭和30年 荒木荘での暮らしも 2年と半年が過ぎました」のナレーションが被さる、街頭テレビに群がる群衆の中に喜美子が見つかる。その喜美子はテレビを見ているのでなく、買い物の途中であることもすぐに分かる。実に楽しそうに仕事をしている喜美子…と言う訳だ。
物干し場の "秋晴れ照明" が "清子の清々しさ" を描写した
買い物から帰った喜美子は、物干し場で布団を叩いている。喜美子が「ええ秋晴れや!」と言う通りの良い天気。
これ、アバンで使われた喜美子と 父・常治(北村一輝)の分かれのシーンは実はピーカン(映像製作現場で「快晴」や「晴天」を呼ぶ業界用語)で無かった、ドン曇り(映像製作現場で「厚い雲がかかり、強い日差しがない状態」を呼ぶ業界用語)でもない、ある意味で中途半端な白い雲が一面に薄く出ている曇り空だった。
だから…と言う訳ではないと思うが、演出家が同じだから、この物干し場のスタジオセットの照明を包嫁にしたと思う。影の出方がくっきりし、木々の緑もパリッと生えて映ることで、喜美子の清々しさが描かれた。なかなか細かい演出だと思う。
ずっと喜美子の傍らにちょこんと見守っていた目覚まし時計
そして、「喜美子 もうすぐ18です」のナレーションのあとに、翌朝の喜美子の部屋。あの引っ越して来た頃から愛用し、喜美子の嬉しい時も怒りまくった時も泣いた時も、ずっと喜美子の傍らでちょこんと見守っていた丸い目覚まし時計が、今回は「5時半」に元気に鳴った。
確か、記憶が正しければ引っ越して来た頃は、女中の先輩・大久保(三林京子)に必死に付いていくために「4時起き」していたはず。2年半で、1時間半だけゆっくり眠れるようになったと言うことは、これだけで喜美子が女中として成長したことが分かる。そう、こう言う映像表現が重要なのだ。
2年半の時間経過の表現が丁寧過ぎる!
更に、「大久保さんの後を無事に引き継ぐことができ 今では 喜美子が一人で荒木荘を切り盛りしています」のナレーションを添えた場面は、まだ喜美子が目覚ましを止めて、自分の布団を片付けている動作中。時間は、放送開始から僅か 3分。もう、丁寧過ぎる…と言いたい。
これ、普通ならアバンのファースト・カットを街頭テレビにして、次のカットは住人たちに次々とお弁当を手渡すカットに、「切り盛りしています」のナレーションを被せれば、15秒もあれば済んでしまう内容だ。
また、違った方法なら、朝食を食べるシーンで住人の誰かが唐突に、「喜美ちゃんが来てから 2年半 大久保さんもいのうなって 本当に助かってるで(関西弁が正しくないのは、ご愛敬で…謝)」と言えば、5秒で済んじゃう。これをやらないから凄い。
逆に “やっちまった” 悪例が『なつぞら』で、ヒロイン・なつの小学校時代から高校三年生までの “描かれなかった9年間” だ。しかし、あの駄作を見ていたからこそ、本作がやっていることが “普通” であることが分かると言う皮肉。やはり、駄作も見ておくべきってことか…
今回でも "先" が見たくなる巧みな仕掛けが…
で、今度はいつぞや、 ちや子(水野美紀)が務める新聞社「デイリー大阪」の ちや子の先輩の平田(辻本茂雄)に鑑定を依頼した「信楽焼の欠片」が登場。そして、何やら「信楽焼の欠片」の両手を合わせて真剣な表情で「今日こそ… 今日こそ!」と祈る喜美子。
これ、普通なら「今日も無事に仕事が終わりますように」とかなのに、「今日こそは…」と、お守りに願掛けをしているよう。こんな謎解きみたいなフラグの立て方も面白い。観ているこっち側は「何が 今日こそなの!?」って “先” が見たくなる。このような視聴者へ “先” の展開を見たくなるような小さな仕掛けが本作は巧いなと思う。
木本サンのアドリブと戸田恵梨香サンのアドリブ返しのOKカットが秀逸
そして、やっと一人目の住人・さだ(羽野晶紀)が登場、更に医学生の圭介(溝端淳平)も登場するシーンに切り替わっても、「今日こそは…」の答えは出て来ない。その間に、さだと圭介の近況報告は、あっさりとナレーション処理。で、描くのは、とにかく喜美子の女中としての仕事の変化。仕事の変化を描く、描く。
と、しているところに、いよいよ「今日こそは…」の答えの頭が見えた。3人目の住人・雄太郎(木本武宏)の登場だ。
もう、「木本武宏劇場」と言っても良いような木本さんの醸し出す新喜劇調の演技で、一気に画面が明るくなったし、木本さんのアドリブに笑ってしまってしまいながらも、戸田恵梨香さんもアドリブ返しでシーンを最後まで乗り切ったのを、OKカットに使っちゃう余裕。こんな余裕が、最近の朝ドラに欲しかったのは言うまでもない…
本当に良く出来た "時間経過の映像表現" の15分間だった!
10分過ぎに、ちや子がやって来て、大久保が時々孫を連れて荒木荘に来ていることが ちや子の台詞で分かった。
そして、アバンで描かれた父と娘の “3年間だけの別れ” と、劇中の今が喜美子が働きだしてから2年半の “足りていない半年間” が、ちや子のこの「荒木荘のお金のやりくりも でけるようになって初めて 喜美ちゃんは 大久保さんに認めてもらえるんや」の台詞で理解出来た。
その後の、喜美子の学校へ行きたい話を含めて、ナレーション処理で幾らでも簡略化できるのに、ちゃんとナレーションと登場人物の台詞を使い分けながら、「喜美子や荒木荘の描かれなかった2年半」を丁寧に簡潔に描いて見せた。いや、“描いて魅せた” と言った方が正しい。本当に良く出来た時間経過の映像表現の 15分間だ。
あとがき
喜美子が美術系の学校に通いたい…と言うフラグも、さり気なく立ちましたね。そして、犬のゴンを連れた新キャラ登場。こう言う類は土曜日の終盤にやるのが一般的なのに、本作はやらない。だから、普通は「土曜日で決着を付けるんでしょ?」って、うがった見方をしてしまいがち。でも、本作は違う。
明日で、ちょうど放送開始から 1か月になります。この調子では、しばらくは安定した内容で安心して楽しめそうです。あとは、数か月後の「信楽焼職人」になる頃が、大きな “山場” であり “評価の分かれ目” になるかも知れません。でも、今のところは満足度が高いです。
|
|
|
|
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
緋色のマドンナ: 陶芸家・神山清子物語
火火 [DVD]
スカーレット ノベライズ上巻
連続テレビ小説「スカーレット」オリジナル・サウンドトラック
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/13387/