シャーロック アントールドストーリーズ (第3話・2019/10/21) 感想
フジテレビ系・月9『シャーロック アントールドストーリーズ』(公式)
第3話『地面師詐欺という闇!死者の伝言は3本の小枝…』の感想。
なお、原作の小説、アーサー・コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズ」は既読だが、全作品ではない。
東京・渋谷の空き家で身元不明の老人の遺体が見つかった。獅子雄(ディーン・フジオカ)と若宮(岩田剛典)は江藤(佐々木蔵之介)から、そこが5年前の「地面師詐欺事件」の舞台で、事件後、詐欺被害に遭った建設会社の社長が自殺をした家だと聞く。獅子雄は遺体の手の部分にある3本の木の枝に気付く。やがて遺体が地面師事件の犯人の1人と判明。そこへ捜査二課の利枝子(伊藤歩)が現れる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:アーサー・コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズ」
脚本:井上由美子(過去作/緊急取調室1,2,3)
演出:西谷弘(過去作/モンテ・クリスト伯、刑事ゆがみ) 第1話
野田悠介(過去作/コード・ブルー・シリーズ、ラジエーションハウス) 第2話
永山耕三(過去作/モンテ・クリスト伯、人は見た目が100パーセント) 第3話
平野眞(過去作/モンテ・クリスト伯、昼顔、ガリレオ、刑事ゆがみ)
音楽:菅野祐悟(過去作/半分、青い。リーガルV、東京タラレバ娘、刑事ゆがみ、偽装不倫)
主題歌:DEAN FUJIOKA『Shelly』(A-Sketch)
驚くべき! まだ第3話なのに 3人目の演出家を起用した!
本編の感想の前に本作の演出について、ディレクターの目線で少しだけ書いてみる。
第1話の演出家・西谷弘氏は『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』や『刑事ゆがみ』等の担当者で、演出全体が『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』同様の癖の強いタイプで、第1話で初期設定の説明が多いと言うマイナス要素を抱えたとしても、若干食傷気味だった。
そして、第2話の演出の野田悠介氏は『コード・ブルー・シリーズ』や『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』等の担当者で、『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』の “匂い” が薄まって、『月9』らしい定番な演出になって、やや面白味に欠けた(内容でなく、あくまでも演出が…と言う意味)。
そして、驚くべきは、この第3話でナント 3人目の演出家を起用した。永山耕三氏は『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』も担当していたが、近作では『人は見た目が100パーセント』、古くは『東京ラブストーリー』や『ひとつ屋根の下』や『ロングバケーション』や『ラブジェネレーション』と言った、かつての『月9』の名作を手掛け、作品も様々なタイプを担当しているベテランのディレクターだ。
第3話担当の永山耕三氏の演出が本作に最も似合っている!
あまり、第3話までで 3人も演出家を交代させる例は見かけないが、逆に考えると、最初から始めの 3話を 3人で担当させる(事前情報では全部で演出家は 4人とされている)と決めておけば…
まず4人の演出家が全体の演出のコンセプトや方向性を一致させることが出来るし、その上で、第1話担当よりも、第2話、第3話の担当の方が撮影までの時間があるから、より『シャーロック』に合う演出を模索することが出来る。
随分と話が長くなったが、私が言いたいのは、この本作担当の演出家を含めたスタッフたちが、懸命に “本作らしさ” を模索し追及していると言うこと。として、私の個人的な好みで言うならば、この第3話担当の永山耕三氏の演出が本作に最も似合っていると思う。その理由は…
古典的名作を現代版に仕上げるセンスの良さが光る秀作な脚本
その理由を書く前に、絶対に書いておかなければならないことがある。それは、古くは監察医と刑事の活躍を描いた名作『きらきらひかる』や、最近では取調官たちと一癖も二癖もある犯人たちが対決する斬新な刑事ドラマ『緊急取調室』を手掛けた井上由美子氏の素晴らしい脚本だ。とにかく “抜かりが無い” と言ったら良いだろうか。
世界中で読み継がれているミステリー小説の不朽の名作『シャーロック・ホームズ』を題材にしながらも、適度に令和の時代感覚を盛り込んで全く古さを感じさせない上に、舞台を現代の東京に置き換えている不自然さも皆無。また、ミスリードの仕方も実に巧みに計算されており、自然と物語に引き込まれてしまう。
やはり、古典的な名作を現代版として復活させるには、相当のセンスの良さが必要になる。そこが実に上手い。秀作な脚本と言って良いと思う。
ディーンさんの"無国籍な雰囲気"が「和製シャーロックホームズ」にピッタリ
更に、俳優陣も見事だ。主演のディーン・フジオカさんが醸し出す “無国籍的な雰囲気” が “本作らしさ” の肝になっている。他の出演者も配役が絶妙に合っていて、見ていて不自然さが無い。
そして、答えを引き延ばしていた、私が「本作に最も似合っている」と思う第3話担当の永山耕三氏の演出がピタリと合致して、見事に新しい「和製シャーロックの世界」の創出に成功していると思う。
若宮とクミコに、もっと必然性のある役割を与えて欲しい…
「褒めてばかりでは、当blogの感想らしくない!」との声が聞えて来そうだから、ちょっとだけ気になったことも書いておく。それは、ゲスト俳優のキャスティングで展開に予想が出来ちゃったこと。もっと、怪しげなゲストで登場人物を増やせば解決できたかも? まっ、ミスリードが巧みだから、そんなに気にならなかったが…
それと、第2話と比べて、 フリーランスの犯罪捜査専門コンサルタント・獅子雄(ディーン・フジオカ)の助手・若宮(岩田剛典)と、警視庁刑事部捜査一課の警部・江藤(佐々木蔵之介)の部下・クミコ(山田真歩)の存在感が薄かったこと。今回程度だったら、居なくても話は成立しちゃう。
ただ、原作を考えると、若宮は「ワトソン」で、クミコは「グレグスン警部」に相当するから、獅子雄が「シャーロック・ホームズ」で、江藤が「レストレード警部」には絶対に必要な助手。だから、シャーロック・ホームズのファンにとっては、もっと若宮とクミコに必然性を持った役割を与えて欲しい。
とは言ったが、現状でも “かなりの高い満足度” であるのは揺るがないが…
あとがき
私は特にディーン・フジオカさんのファンではありませんが “ディーン様” が凄く良いですね。 “本作らしさ” にとても貢献していると思います。それにしても、第3話で、ここまで高次元で「脚本と演出と俳優の三位一体」が完成形に近づいているのは驚きです。
視聴率は、第1話から 12.8% → 9.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と下がっていますが、最近の『月9』では最も “秀作” だと思います。
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