スカーレット (第17回・2019/10/18) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第3週『ビバ!大阪新生活』の
『第17回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
大阪に来て1か月。女中の仕事に慣れてきた喜美子(戸田恵梨香)。余った時間で下宿屋を彩ろうと工夫し始める。その様子を見かけた元女中の大久保(三林京子)は何かを思いつき喜美子に新たな仕事を命じる。どこからか持ち込んだ大量のストッキングの補修だ。喜美子は夜な夜な内職することに。次第に寝不足で苛立ちがつのり、喜美子の怒りが爆発。枕を相手に柔道技を仕掛け感情をぶつけながら給料日を迎える。待望の給料だったが…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
「荒木荘に来て もうすぐ ひとつきになります」のナレが良い
アバンタイトルの冒頭、「荒木荘に来て もうすぐ ひとつきになります」のナレーションで始まった第17話。なんか、こう言うのも良いと思う。きちんと時間経過を視聴者に提示することも、作り手たちが意識することも。前作は、こう言うところが雑だったから。これだけでも安心感がある…
ナレーションが「見出し」のような役割をしているのも興味深い
主題歌明けのナレーションも「仕事の段取りにも なんとか慣れ 叱られることは 随分 少なくなりました」等々、いろいろ補強。でも、どこからか「いつもの、みっきーさんなら “日常描写はナレーションで補完せず、映像で描け!” と叫ぶのでは?」と言う声が聞えて来そうだ。
そう、前作なら完全にそう叫んでいたと思う。ただ、本作は違う。むしろ、ナレーションが「見出し」のような役割をし、実際には喜美子(戸田恵梨香)の言動で、1か月を迎えて、女中の仕事に慣れた部分もあれば、慣れない部分もあり、時間に余裕が出来たことも、序盤の数分間で既に丁寧に描かれている。
戸田恵梨香さんは出来るのに演じる"出来ない喜美子"が良い
更に凄いのは、前回と今回の違いを、喜美子役の戸田恵梨香さんが演技で、しっかりと描いている点だ。もちろん、演技力を評価されてのヒロインへの起用だろうから、当然と言えば当然なのだが、器用だから、理解力が高いから出来ることと、苦手だから、やることが多いから出来ないことが、きちんと演じ分けられている。
これも前作の主演女優では不可能だったこと。例えば、6分頃に描かれた “裁縫” の仕事。ちゃんと喜美子が苦手なのに一生懸命にやっているのが伝わって来る。きっと、戸田恵梨香さん自身は、演技としてそれなりに裁縫を出来るのだろう。出来るから、出来ない演技が出来る。
禅問答のようになってしまったが、眠たそうな喜美子も本当に自然体。流石、「女優・戸田恵梨香」と言わざるを得ない…
段ボール箱の置く位置やカメラアングルの工夫も"ある無し"で大違い
また、映像的にも凝っているのも良い。例えば、4分頃の段ボール箱の置く位置やカメラアングルと、8分頃の段ボール箱は明らかに違えてある。
状況が違うから当然だが、元女中の大久保(三林京子)が「追加や」と言う台詞を活かすために、段ボール箱を大きく見せるように下から煽るカメラアングルが採用されていた。こんな些細な演出も、あると無いとでは大違いなのだ。
登場人物たちの "導線" が様々あって飽きさせない
その延長線上で、良いなと思うのが、登場人物の動きと言うか、スタジオセット内を動く導線。画面の左から来たり、右から来たり、奥から現れたり、画面のど真ん中に陣取ったりと、似たような人物の動きがとても少ない。
これ、美術さんがあらゆる角度から撮影できるように設計を工夫しているから出来ることだし、そう言う作風で行くことが、最初から想定してあるから出来ること。どうやら、脚本家の思い付きばかりの前作とは、全く違うアプローチ(まあ、これが普通なのだが)で作り込まれていると思う。
脚本での "コミカルな描写" での "緩急の付け方" が巧み
俳優、演出と来れば、今度は脚本を褒めよう。今回に限れば、登場人物は喜美子と大久保の二人だけだが、その二人だけで程良いメリハリが付けられている。
10分頃の毎晩続く大量のストッキングの補修の内職で寝不足になり、苛立ちが募って怒りが爆発して、枕を相手に柔道技を仕掛けて、感情をぶつけて…また仕事。 この辺の劇伴の選曲の良さもさることながら、コミカルな描写での緩急の付け方が、脚本のト書きでも丁寧に指定されているのが分かる。この辺も凄いなって思う。
初月給が想像以上の薄給に怒る喜美子が楽しかった
そして、11分頃には、舞台を荒木荘から荒木商事に移して、喜美子も視聴者も気分転換。「リハーサル」の意味も知らない喜美子がさらりと描かれたりして、さり気なく喜美子が田舎生まれ育ちの15歳って雰囲気を醸し出した。
人間関係も丁寧に描かれているし、「わあ きれいや!」と “美しいものには即反応する” と言う喜美子の特徴も描かれた。そして、口紅に反応した喜美子がいたから、さだ(羽野晶紀)が喜美子に「喜美ちゃんも 口紅をさしてみる?」とか言うのかと思いきや、初月給袋を渡した。この辺は大阪らしくて面白い。
そして、大卒の初任給が6千円だった時代に、喜美子の初月給は、なんと千円札1枚だけ。どうやら、今の喜美子は大久保がいるから “見習い” 扱いらしい。そんな怒りを再び枕にぶつける貴美子。こりゃあ、本格的に面白くなって来たぞ。
あとがき
前回の感想で、朝ドラ『カーネーション』を引用しましたが、今回は『カーネーション』のヒロイン・糸子のような、負けず嫌いで身体や言葉で自分の感情を表現しがちな喜美子が描かれて楽しかったです。
今回でかなり、不安要素が消えました。あとは、やはり「喜美子らしさ」を今後どう描いていくか? と、陶芸の道にどう繋げて行くか? でしょうか。かなり満足度の高い第17回でした。
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