監察医 朝顔 (第1話/初回30分拡大版・2019/7/8) 感想

フジテレビ系・月9『監察医 朝顔』(公式)
第1話/初回30分拡大版『法医学の娘と刑事の父の異色タッグ!母を亡くした少女を救う…この夏一番の感動作』の感想。
なお、原作の漫画、<原作・香川まさひと 絵・木村直巳 監修・佐藤喜宣「監察医 朝顔」(実業之日本社)は未読既読。
新米法医学者の朝顔(上野樹里)が勤める大学の法医学教室に、身元不明の女性遺体の解剖依頼が入る。主任教授・茶子(山口智子)に担当を任された朝顔は、父親で刑事の平(時任三郎)が管轄の警察署に異動したと知り驚く。朝顔の恋人で平の同僚刑事となった桑原(風間俊介)も動揺する中、女性に溺死の可能性が浮上。だが発見場所は倉庫だった。やがて、女性が夫・明彦(辻本耕志)と工場を営む恵子(山田キヌヲ)と判明。平らと現場を調べる朝顔は、恵子との対面を拒む小学生の娘・早紀(粟野咲莉)に寄り添い、その死の謎に迫る。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:原作・香川まさひと 画・木村直巳 監修・佐藤喜宣「監察医 朝顔」(実業之日本社)
脚本:根本ノンジ(過去作/相棒シリーズ、フルーツ宅配便) 第1話
演出:平野眞(過去作/Chef~三ツ星の給食~、黄昏流星群) 第1話
澤田鎌作(過去作/CHANGE、不毛地帯、セシルのもくろみ)
音楽:得田真裕(過去作/家売るオンナシリーズ、アンナチュラル、インハンド)
「医療ドラマ」「刑事ドラマ」「父娘のホームドラマ」「震災ドラマ」とテンコ盛り
これをやっておけば大よその視聴率は確保できる「医療ドラマ」と「刑事ドラマ」に、更に「父と娘のホームドラマ」と「震災ドラマ」までテンコ盛りの連ドラ『監察医 朝顔』の第1話が始まった。
ここまで "いいとこどり" の漫画を見つけたのは褒めたい
まあ、いろいろと言いたいことはあるが、まず褒めたいのは、こんな “いいとこどり” の原作の漫画を良くぞ見つけて来たなって印象だ、私は原作が未見だが、調べてみると 2006年から連載が始まり全 30巻の漫画らしい。
東日本大震災被災者父娘の日常の互いを思う心情は伝わった
従って、原作では主人公は、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災で母を亡くした設定となっているのを、本作では 2011年3月11日に発生した東日本大震災によって母が行方不明になっているという設定に変更されたそうだ。
と言うことは、本作の主人公・朝顔(上野樹里)にとって、東日本大震災の被災者であり、震災で家族を失ったと言う設定は、脚本上では、とても重要な要素であることは間違いない。
だから、新米法医学者の朝顔と、父で刑事の平(時任三郎)が、二人で互いを支え合いながら日常生活を送りつつ、娘の震災による PTSDを何とか克服させてやりたいと言う父親心も当然だし、ドラマとして、この部分はしっかりと伝わった。
母を亡くした早紀を呼び止め弁当箱を渡すまでは許容範囲…
しかし、この「朝顔が震災被災者」と言う設定だからこそ、この第1話の、引ったくり事件で母親・恵子(山田キヌヲ)を亡くしたのに遺体との対面を拒む小学生の娘・早紀(粟野咲莉)を励ます(つもりの)朝顔の言葉は解せなかった。
まず、死因が確定し、平と朝顔が事件の概要(真相)を夫の夫・明彦(辻本耕志)と早紀に伝える。ここは悪くない。しかし、真相を知ってしまった明彦が嗚咽するなか、早紀はその場を逃げるように廊下に走り出して行く。
早紀を追い掛ける朝顔が早紀を呼び止めて、母が新たに買った弁棒箱を先に差し出してこう言う↓。1時間2分を過ぎた頃のシーンだ。
朝顔「早紀ちゃん これ。
お母さんからのプレゼント。お弁当箱」
ここまでは、ギリギリ許容範囲だが…
朝顔が事実を言った姿は"早紀に寄り添い"とは言い難かった
この台詞の直後に、早紀が母親に「友達に言われたの 早紀ちゃんのお弁当箱 おじさんみたいって」と愚痴をこぼし、母の手作りの弁当を地面にぶちまける。恵子はそれを拾う場面がインサートされて、朝顔が再び早紀にこう言う。
朝顔「お母さん これを守ろうとしたの。
悪い人に これを取られないように必死に守ったの。
それから おうちに帰ろうとしたんだよ」
このあと、早紀は「お母さんに 会いたい…」と言って母の遺体と対面を果たす。が、これで良いのだろうか? どうも捻くれ者の私には、この朝顔の励ましのつもりの台詞は解せないのだ。そもそも、あのシーンが上記の Yahoo!テレビのあらすじにあるような “早紀に寄り添い” と言えるだろうか。
早紀の気持ちが一番分かるはずの朝顔の台詞で無いと思う…
確かに、朝顔が先に言ったのは事実だ。事実は時に残酷な現実でもあるのだから、事実を、ましてや母親を亡くしたばかりの小学生の女の子(主人公と同性と言う意味で、敢えて書いた)に伝えるのは、慎重になるべきと思う。だった、自分だって母親を(事件では無いが)震災で亡くした同じ立場なのだから。
ただ、朝顔から「お母さん これを守ろうとしたの。悪い人に これを取られないように必死に守ったの」と目の前にいる大人の白衣を着た女性から言われた早紀の気持ちは、(ドラマなのに考え過ぎかも知れないが)これからずっと “自分の我儘のせいで母が殺された” と自責の念に駆られ、苦しみながら生きて行くのではないだろうか。
震災後8年でも母を失った現場に行けない朝顔が無ければ…
そう、一番早紀の気持ちを考え “寄り添える” のは朝顔のはずなのに、早紀に朝顔がこんなことを言うのか? と言うのが解せないのだ。これが、まだ震災から 8年経った今でも母を失った現場に行くことすら出来ない朝顔を第1話で見せなければ、「ふ~ん、結構シビアな主人公なんだ」で済んだと思う。
しかし、わざわざ PTSDが治っていない朝顔の描写を入れてあったから、「朝顔って、冷たい人間なの?」「仕事と私生活は別と言う性格の人なの?」と言う違和感しか無かった。そして、その違和感は 30分拡大の 90分間を観終えても払拭されることは無かった。
直ちに"朝顔が監察医を目指した理由"を"明瞭に"描くべき!
なぜ、そうなるのか? 理由は簡単だ。朝顔が監察医を目指した理由が “明瞭に” 描かれていないから。もちろん、好意的な解釈をすれば、「母親が震災で行方不明のまな被災者」と言う朝顔の初期設定があるから、死因究明に興味を持ち、新人ながら頑張って検死をし、犯罪被害者の早紀を励ました…とは、なる。
なるが、そんな初期設定を持った朝顔が、早紀にこんなことを言うだろうか…って、こと。私は、安易に震災や被災者を登場人物の初期設定に持ち出すのは、基本的に反対だ。なぜなら、同じような人がテレビを見ている可能性があるから。
でも、ダメとは言わない。使うなら慎重にやって欲しいのだ。その意味で、あらすじを読んだ時に、ちょっと期待しただけに残念感が半端ない第1話だった…
あとがき
これ、速攻軌道修正した方が良いと思います。直ちに「なぜ朝顔が監察医を目指したのか?」を明瞭に描かないと、劇中の「朝顔の私生活」の部分が、全部「朝顔の監察医としての仕事」をぶち壊しますから。
あの、デリヘル嬢の生き様を通して人間の機微を見事に描いた深夜ドラマの隠れた名作『フルーツ宅配便(全話の感想)』の脚本を手掛けた根本ノンジ氏なら、簡単なことだと思いますが。いや、なぜ第1話の朝顔の決め台詞にあんなのを書いたのか。それも不思議でならないですが…
前作の『ラジエーションハウス?放射線科の診断レポート?』も、主人公の初恋と医師免許を隠すと言う初期設定が、最後まで足を引っ張って終わったので、今回も初期設定が早めに修正されなかれば、大好きな『月9』でも離脱します。と言う訳で、第2話も様子見です…
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