きのう何食べた? (第12話/最終回・2019/6/28) 感想

テレビ東京系・ドラマ24『きのう何食べた?』(公式)
(第12話/最終回『(無し)』の感想。
なお、原作の漫画、よしながふみ「きのう何食べた?」(講談社「モーニング」連載中)は、未読。
正月、ついに史朗(西島秀俊)の実家へ行く日を迎え、賢二(内野聖陽)はどうにも落ち着かない。実家に着くと、さすがに史朗の顔もこわばり、出迎えた久栄(梶芽衣子)と悟朗(田山涼成)も緊張で言葉がなかなか出ない。そんな中、久栄は唐揚げの準備のため史朗を連れて台所へ行ってしまう。気まずい空気の中、悟朗は「史朗のアルバムを見よう」と賢二に声を掛け、2階の部屋へ。高校時代の史朗はよく勉強をしていたと語る悟朗。賢二は、勉強に励んだのは同性愛者であるが故、将来を見据えた行動だったのではないかと話す。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:よしながふみ「きのう何食べた?」(漫画)
脚本:安達奈緒子(過去作/大貧乏、コード・ブルー3、透明なゆりかご)
演出:中江和仁(過去作/映画「嘘を愛する女」) 第1,2,3,10,11,最終話
野尻克己(過去作/映画「鈴木家の嘘」) 第4,5,6話
片桐健滋(過去作/映画「ルームロンダリング」) 第7,8,9話
音楽:澤田かおり(過去作/TBS系『噂の!東京マガジン』エンディングテーマ)
オープニングテーマ:OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「帰り道」(TOY'S FACTORY)
エンディングテーマ:フレンズ 「iをyou」(ワーナーミュージック・ジャパン)
きっと「遂に」と言う言葉は、こう言う時に使うのだ
「遂に」と言う言葉は、こう言う時に使うのだ、きっと。遂に、賢二(内野聖陽)が史朗(西島秀俊)の実家へ行く日を迎え、史朗と母・久栄(梶芽衣子)がは唐揚げの準備のため史朗を連れて台所へ行ってしまい、賢二と父・悟朗(田山涼成)が超気まずい中で二人っきりになった。
もう、これだけで、30年近く前に私自身が最初に妻の実家に行って、義父と二人っきりになった6畳間の真ん中の掘りごたつの小ささに驚いたのを思い出した(笑) そして、そんな現場の緊張感がヒシヒシと伝わって来て、「どうなるの~」と思ったら、 悟朗は「史朗のアルバムを見よう」と賢二と2階の部屋へ。
賢二の「高校時代の史朗の考え方」の推測にグッと来た
で、賢二は、高校時代のシロさんが勉強に励んだのは自分が同性愛者だから孫を見せられない一人っ子の自分に出来る最高の親孝行として、いい大学に入って弁護士になったのでは? と、自分がサラリーマンでなく美容師と言う職業を選んだ理由と重ねて話した。私は、この賢二の推測にグッと来てしまった。
そして、このシーン直後に、まるで母親が娘に「筧家の味」を伝授するような軽快なシーンを構成したのは、本当に “本作らしい楽しいメリハリの付け方” だ。これも、今回が最後だと思うと寂しくなった…
シロさんの両親の賢二への誤解も、本作らしい洒落たオチに
唐揚げが美味し過ぎて、つい出てしまった賢二のいつものゲイ言葉に、鋭く反応したように突然無表情になった久栄が、悟朗と一旦部屋を出て行く。これまた気まずい雰囲気。と思ったら、たいそう機嫌の良い表情で部屋に戻って来て大笑い。
どうやら、賢二が「筧家の味」を気に入ってくれたのが嬉しかったようだ…と思ったら、シロさんの両親は、目の前のスーツを着てゲイ言葉を喋る賢二が、息子と一緒に暮らしている時は「女装」をしているのを想像して大笑いしていた…と言う洒落たオチ。
ピュアな賢二の優しさと素直さに、シロさんはこう言った…
そして、そんなエピソードで丁寧に描かれた、ピュアな心の持ち主の賢二の優しさと素直さに、シロさんは、こう言った…
賢二「もう… 俺 ここで死んでもいい」
史朗「何言ってんだ。死ぬなんて そんな…
そんなこと言うもんじゃない。
食いもんは… 油と糖分控えてさ 薄味にして 腹八分目で
長生きしような 俺たち」
賢二「そうしよう」
ここでは手をつなぐのでなく、史朗が賢二の肩を抱き寄せて、賢二が史朗に寄り掛かるようにして階段を一歩ずつ上がって行く様子のまま、劇伴と共にフェードアウト。
なんか、こう言うシーン尻(シーンの終わり方)って王道なのに、背の高い男性二人が寄り添って歩くだけで新鮮だし、むしろ、より味わい深さがとロマンチックさが増したような気がした。
賢二と史朗のイチャイチャの "シーンの跨ぎ方" も "無音の尺" も絶妙
CM明けはロマンチックなシーンから一気に生活感のあるスーパーへの買い物のシーン。30分頃まで、ほぼずっと “非日常” を描いて来ての “普通の日常” を見られる楽しさ。
と思えば、今度は女性ばかりのカフェで注目を浴びることになってしまう賢二とシロさん。ここでも、再び描かれるピュアな心の持ち主の賢二の優しさと素直さ。1話の二度描くのには意味があった。それが、このシロさんの笑顔と台詞だと思う。
史朗「いいかげん もういいかなと思って」
こう言うのが連ドラならではの醍醐味ってやつだ。最終回で、親譲りの頑固者なシロさん自身の考え方が、ちょっぴり変わる。相手が変わったことが単純に嬉しくなった賢二。で、ここは二人のイチャイチャのままカットアウトでCMへ。
このバッサリ途中で切ってしまうことで、逆にいつまでも店でイチャついているんだろうな…って思わせるのだ。そして、CM明けは、そのイチャつきの延長線上の賢二がシロさんの髪を切るシーン。話がイチャイチャで繋がっているから、史朗がカフェの話に戻すのも自然に見えるって、脚本の作戦が。だから、もう一度史朗が繰り返す…
史朗「これからはカフェくらい 何度でもつきあうよ」
シロさんの背中に賢二が抱きつくカットの “無音の尺” も文句なし! 本当に良く出来た連ドラだ。
全てがフィクション、虚協の世界のお話なのに…
最後に、第3話あたりから敢えて書かずにいたことを書いてみる。長年プロの、それも主役をやる程の有名俳優が演じているのだから、演技が上手くて当然なのだ。しかし、今作に於ける賢二と史朗を演じた内野聖陽さんと西島秀俊さんの(アドリブを含めた)演技力には恐れ入った。
賢ちゃんが内野聖陽さんに寄せているのか、内野さんはもう賢ちゃんなのか? シロさんと西島秀俊さんも同じ。見事に演技力が “役が憑依しているよう” に見せてくれた。そのお蔭で、全てがフィクション、虚協の世界のお話なのに、まるで近所や身近な人たちの出来事のように、世界観に没入出来た。
このように感じるドラマは数少ない。もちろん、素晴らしい脚本と演出があってこその、俳優の演技力なのだが、それでも “まるで目の前にいるようなリアルな存在感” をずっと醸し出し続けた二人の名優に拍手を送りたい…
あとがき
最後の最後は、しっかりと「中年のゲイのカップルの恋愛ドラマ」に帰着しましたね。途中、幾度もセクシュアルマイノリティの人たちの恋愛を通して、人間そのものの “広域での愛” を描いていた部分がありました。でも、先に書いた通り最終回の最後は、原点に戻りました。
結局、賢二と史朗と言う主人公たちの中年の男性カップルの毎日の食卓を通して、3組の男性カップルや、そこに関わる人たちの人生の機微や、ほろ苦くて温かな日常を、丁寧に且つリアルに描いたのは、「ドラマは、人間そのものを描くべき」と言う私の考え方にピッタリの傑作でした。原作の漫画も読んでみます。
最後の最後に。今日は早朝から仕事で、感想の投稿が遅れて申し訳ありませんでした。そして、これまでたくさんの Web拍手やコメントを頂き、ありがとうございました。
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/12970/
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