なつぞら (第71回・2019/6/21) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『なつぞら』(公式サイト)
第12週『なつよ、千遥のためにつくれ』の
『第71回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
なつ(広瀬すず)たちアニメーターのいる作画課に、新人の演出助手、坂場(中川大志)が突然やってきた。そして原画担当の下山(川島明)に、動画の動きについて、ずばずば疑問をぶつける。見ると、それはなつが描いた馬の絵だった。必死に意図を説明するなつに対し、淡々と理詰めで動画の矛盾を指摘してくる坂場。なつが追い詰められたその時、坂場の言いたいことはわかったと、下山がふたりの間に割って入ってきて…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
最近のナレーションって、不要なものが多くないか?
最初の1,,2週のナレーションは、なかなか良かったのに、最近のナレーションって不要なものが多いと思わないだろうか? 今回のアバンタイトルのナレーション↓なんて正にそんな感じ。
N「この不器用な青年が やがて アニメーターにとしてのなつに
大きな影響を与えてゆくことになるかもしれません。霊感です」
「なるかもしれません」でなくて、なるんでしょ? それに、最後に付け加えられた「霊感です」だって、字幕で見ると、わざわざページを変えていたから、きっと脚本家や演出家は面白いと思ってやっているのだろう。
でも、こう言う如何にも「これから、もっと面白くなるよ宣言」みたいなのって、ドラマが本当に楽しく進行している時は期待感に繋がるが、朝ドラ100作中で最も駄作になる可能性を秘めちゃってる現状で言われると、逆にこちらから「期待できるような内容にしてよ」と言いたくなる。
板場がなつを質問攻めする場面は分かり易く描くべきだった
さて、本作の唯一の良心である「アニメーション黎明期の説明コーナー」が終わると、新人の演出助手・坂場(中川大志)が突然やって来て、原画担当の下山(川島明)に、なつ(広瀬すず)が描いた馬の動画の動きについて、次々と疑問をぶつけ始めるシーンが始まった。
これ、映像、特にアニメーションを制作する過程を描くドラマで、私としては最も、しっかりと丁寧に、そして視聴者に分かり易く描いて欲しいシークエンスだったのに…
なつが描いたアニメーションが褒められて世に出るだけの朝ドラ?
クライアントとの守秘義務契約があるため具体的な名称は明かせないが、数年前にとあるIT企業の10周年記念映像を、アメリカ在住の日本人アニメーターに制作依頼したことがある。その際に、演出家(私)の意図とアニメーターの意図が異なることが本当に多かった。何せ、両者の基準は脚本だけだから、思い違いや勘違いは日常茶飯事。
特に、『なつぞら』の時代はSNS等のコミュニケーション・ツールなんて電話くらいだろうから、さぞ大変だったと思う。だからこそ、この演出家とアニメーターとのやり取りを正確に分かり易く描かないと、本作の面白味が欠けるのは確か。だって、ここがきちんと視聴者に伝わらなければ、ただ「なつが勝手に描いたアニメーションが皆に褒められて世に出るだけの朝ドラ」になるかも知れないのだから。
その点で言えば、例えば、2012年のドラマ『重版出来!』では、編集者と漫画家のやり取りが楽しく丁寧に描かれて大ヒットしたのを思い出してしまった…
板場の「ただの説明になりませんか?」は、脚本家の自虐ネタ?
では、本作ではどう描かれたか? 正直、内容そのものが(専門的だと言うこともあろうが)分かり難い上に、ただ単純に板場となつの台詞のやり取りだけで描いているから、分かり難さが半端無かった。例えば下記のやり取りなんて…
板場「ストレッチ アンド スクオッシュですか?」
なつ「えっ…」
板場「ディズニーの原則ですよね」
なつ「そです」
板場「そういう表現は 動きにリアリティーがなければ
ただの説明になりませんか?」
なつ「それは わかってます」
この板場となつとのやり取り、脚本家は自虐ネタになっていることに気付いているのだろうか? ドラマでは、特に朝ドラではヒロインを演じる女優の台詞も言い回しや動作にリアリティーがなければ、ただの説明なのだ。
そして、今回の二人のやり取りには、そもそもリアリティー以前の問題として、視聴者に対して何を言っているのかも分かり難いから、ただの説明にもなっていない。これ、アニメーションの制作過程を描くドラマとして致命的だと思う。
「なつ=瞬間湯沸かし器」なのに、先輩が助けるのが遅すぎる!
更に困ったのは、古い言い回しで恐縮だが、下山たちは、「なつ=瞬間湯沸かし器」なのが分かっているのに、いくら描いたのがなつだからと、これだけの演出理論武装が出来ている演出助手相手に、なつに説明させて自分たちは「困ったなぁ~」みたいな顔で見ているのって、今の時代なら “ほぼパワハラ” 状態だと思う。
やはり、幾ら才能があろうが「なつ=瞬間湯沸かし器」なのが分かっている時点で、もっと早い段階で先輩である下山や麻子(貫地谷しほり)が助け船を出すべきだった。そして、結局下山が「直そう」と言うなら、ただのイケメンとカワイ子ちゃんを延々と画面に出すだけのシーンだったってことと同じでないか!
あとがき
昭和30~40年代の映画監督ら演出部の人たちって、自分たちのことを「インテリヤ○ザ」とか言って、板場のように映像を論理的に詰めていくのが本望…みたいな時代だったはずだから、板場が哲学部卒なんて設定は面白いと思います。
だからこそ、あの演出部とアニメーターとのやり取りは、もっと具体的な例を挙げて、全ての視聴者に対して分かり易く説明して欲しかったし、するべきだったと思います。それを結果的に、なつを瞬間湯沸かし器に、先輩たちを役割放棄に描いて終わったのは、やはり駄作確定の予感しかありません…
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【これまでの感想】
第1週『なつよ、ここが十勝だ』
1 2 3 4 5 6
第2週『なつよ、夢の扉を開け』
7 8 9 10 11 12
第3週『なつよ、これが青春だ』
13 14 15 16 17 18
第4週『なつよ、女優になれ』
19 20 21 22 23 24
第5週『なつよ、お兄ちゃんはどこに?』
25 26 27 28 29 30
第6週『なつよ、雪原に愛を叫べ』
31 32 33 34 35 36
第7週『なつよ、今が決断のとき』
37 38 39 40 41 42
第8週『なつよ、東京には気をつけろ』
43 44 45 46 47 48
第9週『なつよ、夢をあきらめるな』
49 49 50 51 52 53 53 54
第10週『なつよ、絵に命を与えよ』
55 56 57 58 59 60
第11週『なつよ、アニメーターは君だ』
61 62 63 64 65 66
第12週『なつよ、千遥のためにつくれ』
67 68 69 70
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