インハンド(第4話・2019/5/3) 感想

TBS・金曜ドラマ『インハンド』(公式)
第4話『自殺を導く病原体!? 封印された博士の過去が暴かれる』の感想。
なお、原作の漫画、朱戸アオの「インハンド プロローグ1 ネメシスの杖」、「インハンド プロローグ2 ガニュメデスの杯、他」、「インハンド(1)」、連載中の「講談社 イブニング 2019年10号[2019/4/23発売]第11話:キマイラの血(8)」まで既読。
外務事務次官・源田(紫吹淳)の元に「日米外相会談を中止しなければ、娘・恵奈(吉川愛)を‘人を自殺させる病原体’で自殺に追い込む」という脅迫状が届く。差出人は病原体の被害者として、3人の名を挙げていた。牧野(菜々緒)の調査依頼を珍しく素直に受けた紐倉(山下智久)は、恵奈から話を聞く。恵奈と被害者3人は幼なじみで、同じ治験のバイトをしたという。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:朱戸アオ「インハンド」(講談社「イブニング」連載中)
脚本:吉田康弘(過去作/映画「黄金を抱いて翔べ」、コウノドリ[2]) 第1,2,3話
田辺茂範(過去作/参道高校合唱部!、レンタルの恋、トクサツガガガ)
福田哲平(過去作/) 第4話
演出:平野俊一(過去作/ブラック・マンディ、Sー最後の警官ー、カンナさーん!) 第1,2話
岡本伸吾(過去作/隠蔽捜査、TAKEFIVE、大恋愛) 第3話
青山貴洋(過去作/オーマイジャンプ!第3話、ブラックペアン第7話、グッドワイフ第8話) 第4話
音楽:得田真裕(過去作/家売るオンナシリーズ、アンナチュラル)
主題歌:山下智久「CHANGE」(SME Records)
2人が個々に背負った十字架が寄り添い励まし合う人間ドラマ
今回は、2人の人間がそれぞれ背負った、決して簡単に下ろすことの出来ない十字架が、ふとした奇異な殺人事件をきっかけに、互いに寄り添い励まし合う、そんな人間ドラマを垣間見た。
1つ目の十字架は、幼き頃に思いで作りのつもりで気軽に「度胸試しをしよう」と口火を切ったものの、馬が怖くて馬小屋に入ることの出来ず、結果的に病原体に感染することなく、更に大切な友人たちを死に追いやることになってしまった治験に誘った張本人として、たったひとり生き延びることになった外務事務次官・源田(紫吹淳)の娘・恵奈(吉川愛)が背負った十字架だ。
そして、もう1つの十字架は、かつての助手・入谷廻(松下優也)を失った紐倉(山下智久)の十字架だ。
紐倉の非情な中にも、懺悔と強さと愛あるセリフが胸に突き刺る
そして、物語は紐倉と恵奈の境遇を重ねて、恐らく以前に紐倉自身が背負った十字架から逃れる “きっかけ” となったであろう…
紐倉「感情の奴隷には なるな」
※ ※ ※
紐倉「でも 感情があるから人間なんだ」
※ ※ ※
紐倉「人間は… 笑顔になれる唯一の生物だ」
と言う、恵奈への紐倉からの励ましの言葉が、非情な中にも懺悔と強さと全ての人間への愛が籠った言葉にも聞こえ、私の胸に突き刺さった。
主人公の過去を混ぜること自体は間違っていないのだが…
また、今回はこれまでで最も「紐倉の過去」がドラマに組み込まれた。入谷を知る製薬会社“セクメト” の鍋島智樹(山中崇)との対峙構造の一部として描かれた訳だが、主人公の過去を混ぜること自体は間違っていない。
ただ、分量が若干多過ぎたような気がする。これを言ったら元もこもないが、殆どの連ドラでは「主人公の過去」は最終回直前で大きく動き、最終回でしか明かされない。要は余程上手くやらなければ “只の客寄せ” でしかないのだ。
もっと4人の友情や、紐倉と恵奈のやり取りを観たかった…
だから、今回でこんなに紐倉の過去を盛り込まずに、もっと4人の友情の描写や、紐倉と恵奈とのやり取りに時間を割いて欲しかった。特に、紐倉と恵奈、山下智久さんと吉川愛さんの終盤のシーンは、もっともっと観たかった。
"俳優・山下智久" の紐倉から恐ろしい程の生命力が伝わる
また、どうしても今回の感想で書かなければならないのが、この第4話で山下智久さんと原作に於ける「紐倉哲」が完全に重なったってこと。
やはり、『アルジャーノンに花束を』での「白鳥咲人」にも通じる、心に苦悩を抱えつつ、その心を “自戒” と言う芯で支えて、懸命に生きる男を演じる “俳優・山下智久” からは、恐ろしい程の生命力が伝わって来る。これで更に “まじめな右腕” こと「高家春馬」が紐倉と絡むシーンが増えたら、言うこと無しだ。
あとがき
今回は少しだけ厳しい感想を書きました。まず、冷静に見て過去の3話よりも、脚本の構成力と演出による訴求力が乏しかったです。簡単に言うと、病原体の話と紐倉の過去の話も盛り込み方が上手くなかった上に、視聴者を引き付ける “魅せる演出” が少なく平坦に見えました。
それでも、他の連ドラに比べたら格段に良く出来ているのには間違いありません。だからこそ、「主人公の過去」をやたらと盛り込んでは全体が崩壊した古今東西の悪例、駄作と同じ道を歩んで欲しくないのです。
また、原則的に原作と映像作品は比較しない立場で言うのも何ですが。原作の漫画も、この実写化ドラマも、よくぞ毎回感染や病原菌をネタに本作らしいエピソードを考え付くものだと感心します。
そして更に感心するのは、漫画と実写化ドラマが、ここまで個々の媒体の特性を活かして面白い作品に仕上がっているのは珍しいってこと。
漫画は、コマ割りやページの割り当てが生み出す、ページをめくる媒体ならではのテンポが心地好いですし、実写化ドラマは平面では表現不可能なロケ地やスタジオセットや道具などの手抜きない作り込みが素晴らしい。と言う訳で、漫画もドラマも今後に期待します。
最後に。原作者の朱戸アオさんの Twitter で当blogが紹介されていると、読者さんから伺いました(私、SNSをやらないので)。本作に限らず、原作者や担当ディレクターさんが読んで下さるので、もの作りを生業とする端くれとして感想も、更に気合いを入れないと…
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