日テレ 萩原健一さん追悼放送「傷だらけの天使」 (第1話/最終回・2019/4/8)感想
日本テレビ系・『追悼・萩原健一さん「傷だらけの天使」第1話/最終回』(公式サイト)
『3月26日に亡くなった萩原健一さんの代表作★1974~1975年に放送された2人の若者の怒りと挫折を描いた1話完結の探偵ドラマ。有名なオープニングも必見!!』の感想
●第1話「宝石泥棒に子守唄を」
修は貴子の命令で宝石店に押し入り多額の宝石類を強奪するが、途中子供にケガをさせたことから仕事は思わぬ方向に進んでしまう…
●最終回「祭りのあとにさすらいの日々を」
ペントハウスが突然、取り壊されることになり驚く修。綾部事務所は全員姿を消していた。修は京子から貴子が修を連れて海外へ逃亡しようとしていると聞き、すがる亨を振り切って、出て行こうとするのだが…
【監督】 第1話:深作欣二 最終話:工藤栄一
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:柴英三郎(過去作/家政婦は見た!シリーズ) 第1話
市川森一(過去作/ウルトラシリーズ) 最終話
演出:深作欣二(過去作/仁義なき戦いシリーズ) 第1話
工藤栄一(過去作/必殺シリーズ) 最終話
撮影:木村大作(過去作/映画「八甲田山」「駅 STATION」「極道の妻たち」) 第1話
田端金重(過去作/映画「積木くずし) 最終話
音楽:大野克夫(過去作/太陽にほえろ!、寺内貫太郎一家、アニメメ「名探偵コナン」)
井上堯之(過去作/太陽にほえろ!、寺内貫太郎一家、前略おふくろ様)
衣装デザイナー:菊池武夫(ファッションブランド「タケオキクチ」の創始者)
衣装協力:株式会社ビギ(MEN'S BIGI)
オープニング映像の演出:恩地日出夫(映画「伊豆の踊子('67)」「めぐりあい('68)」)
オープニング映像の撮影:木村大作(過去作/映画「復活の日」「居酒屋兆治」「火宅の人」)
敢えて、可能な限りネタバレせずに感想を書こうと思う…
今から約45年も前に放送された連ドラではあるが、この投稿を読んで『傷だらけの天使』に興味を持った読者さんには、初見の気持ちで本作を満喫して欲しいから、可能な限りネタバレせずに感想を書こうと思う。
私が本作それなりに理解したのは、二十歳の映画青年の頃…
私は、1974年の本放送時は小学生だったからリアルタイムでは見たもの、正直内容は良く分からなかった。その5年後に放送された松田優作さん主演の連ドラ『探偵物語』になると中学生以上だったから、かなり内容は理解できたのをまず覚えている。
従って、本作の内容をそれなりに理解したのは、映像業界に足を踏み入れた二十歳以降の再放送だ。それでも、まだ二十歳の映画大好き青年だ。
かなり攻撃的で反社社会的な映像美は、衝撃的だった!
目を引いたのは、全体的な作風が、1960年代後半から1970年代半ばにかけてアメリカで製作された、反体制的な若者たちの心情を描いた、所謂「アメリカン・ニューシネマ」に強い影響を受けている点だ。
また、「コンプライアンス違反」なんて言葉が無かった時代であり、テレビドラマの主流がお茶の間の娯楽だった時代を考えると、かなり攻撃的で反社社会的な映像美は、衝撃的だったと言う事だ。
観客を主人公へ釘付けにするオープニング映像のカメラワークが痺れる
それを最初に印象付けたのが、有名はオープニング映像だ。青春映画の監督として、当時としては相当に瑞々しい映像美で評価の高かった恩地日出夫氏が演出を手掛けた。撮影は、巨匠・黒澤明も絶賛した “ピント合わせの達人” であり、今でも日本一のカメラアングルとサイズを創り出す名カメラマンの木村大作氏。
「生きることは食べること」と言わんばかりに欲望にむさぶりつく主人公のアップを中心に、スチール写真がテンポ良くインサートされ、まるで今で言うミュージックビデオ的な手法で、主人公の青春を編集で描いた。
また、撮影は当時の超多忙なスケジュールによって三脚を使う時間も無かったと言う理由で、木村大作氏としては珍しい手持ちカメラでの撮影になる。小型のフィルムカメラを使って巧みに被写体に寄って行き、視聴者を主人公へ釘付けにするカメラワークは、今見てもワクワクする。
ゲリラ撮影的に普通の街中に俳優を投じ激写するスタイルの緊張感
さて、内容についてだが。本作のタイトルが『傷だらけの天使』となった点については、先日の投稿『今夜! ショーケン偲ぶ…「傷だらけの天使」追悼放送を見るべし!』で触れた。
そして、第1話のメガホンをとったのは『仁義なき戦いシリーズ』の深作欣二監督。ゲリラ撮影のように普通の街中に俳優を投じて、そこを激写するようなスタイルは、正に『仁義なき戦い』だ。テレビの外から見ても、現場の緊張感がヒシヒシと伝わって来る。
「超絶崩壊劇」の最終回で是非見て欲しい、2つの名場面…
そして、最終回の脚本は、『傷だらけの天使』の生みの親と言っても過言でない市川森一氏。メガホンをとったのは、チャンバラ映画や任侠映画で腕を振るい、あの人気テレビシリーズ『必殺仕事人」を生み出した工藤栄一氏。内容は、これでもか? と言わんばかりの「崩壊劇」だ。ネタバレせずに書けることを二つ。
一つは終盤での、波止場での岸田森さんと西村晃さんの狂気的な演技が素晴らしさと、手持ちカメラでブレブレのカメラワークの中に、長めの尺で入る前進する大型船の水平ラインが若干右に傾き、船が右上がりに映し出されるのが、堕ちて行く男たちとの対比になっており、木村大作氏のセンスが光るシーンだ。
↑上の説明については、過去のこの投稿が役に立つと思います。
[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~
二つ目は、埋め立て地での萩原健一さんの悲壮感漂いまくりの演技と、撮影・木村大作氏のその後の代表作の一つになる『復活の日』に通じる “人の終焉” を見事に切り取った衝撃的なラストシーンだ。とにかく、出来れば、全26話を見て欲しいと思う。
あとがき
数十年ぶりに本作を見て、若い頃に見たのとはだいぶ異なる印象を受けました。特に、脚本や演出面での構成の完成度の高さと、人間の表層と内面の描き方の鋭さは、私の記憶よりも遥かに凄かったです。これを機会に、「Blu-ray-BOX(3枚組 全26話収録) 」をポチッとしました。追って、ゆっくり楽しみたいと思います。
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/12653/
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