なつぞら (第9回・2019/4/10) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『なつぞら』(公式サイト)
第2週『なつよ、夢の扉を開け』の
『第9回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
家を飛び出し帯広までやってきたなつ(粟野咲莉)は、川のほとりで魚釣りをする天陽(荒井雄斗)を見つける。ひとりで来ていたなつを天陽は心配し声をかける。なつは家族を待っていると強がるが、やがて天陽も家路に着き、ひとり河原に残されてしまう。なつは父の形見の手紙を取り出し、読む。涙があふれだすなつ。すると…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
川に刺さる木の枝の上でさえずる "小鳥のカット" の意味…
前回の感想で、演出面の良さにちょっと触れたが、今回も演出が良かったシーンがあったので、少々書いてみる。それは、主題歌明けの2分頃からの、奥原なつ(粟野咲莉)が亡き父からの手紙を読むシーンだ。まっ、分析すると演出だけでなく脚本と俳優の三位一体の成せる技と言うべきなのだが。
まず演出の掟通りに、最初にこの度の舞台が川辺であることを示す「川に刺さる木の枝の上でさえずる小鳥のカット。この「最初は一羽」で2カット目で「小鳥が二羽」と言うのが、アバンで描かれた富士子(松嶋菜々子)が言った「なつが家を飛び出した理由」に繋がるように映った。
これまでの出来事に繋がれば「なつは一人でない、剛男(藤木直人)たちもいる」とも受け取れるし、「なつには兄・咲太郎(渡邉蒼)もいる」とも受け取れられるし、実はそのあとの「なつの心にはお父さんがいる」の前振りにもなっている。単なる場所説明のための情景カットに、様々な意味を含めたのは演出の技だ。
なつが手紙を読む場面は、演出と脚本と俳優の総合芸術だ
そして、演出と脚本と俳優の三位一体は、なつが手紙を読むシーンで見て取れた。なつが手紙を取り出して読み出す。最初は、なつのモノローグで始まる。なつの口は開いていないから所謂「黙読」に見える。そして、手紙の文字のアップ。続いて、音声は奥原なつのモノローグから、内村光良さんの「語り」にクロス・フェードして行く。ここまでは、至って普通だ。
なつは、父からの手紙を記憶する程に読み込んでいる…
秀逸なのは奥原なつが泣き出す瞬間から。見開いていた奥原なつの目が細くなって泣き始める。私には “あの目の開き方では手紙を読めない” と見えた。しかし、「語り」は淡々と続く。そう、なつはきっと父からの手紙を記憶するほど読み込んでいる…と見えないだろうか。
その事は、チラッと手紙がめくれるのが見えて、なつの5人家族だった絵の頁になっても、手紙の「語り」が続いている事からも分かる。なつにとって、この手紙がどれだけ大切なものかを映像だけで魅せた。
歌とアニメで、なつの創造力の翼の大きさと広さを的確に描いた
そして、風鈴の音をきっかけに父の絵が動き出して、「語り」がアメリカの超ポピュラー音楽『My Blue Heaven(私の青空)』の歌に変わる。『私の青空』と言えば、2000年4月~9月に放送された連続テレビ小説第62作のタイトルでもある。この辺は視聴者向けサービスだろう。
映像は、鉛筆書きの線画からカラーのアニメーションへの変化し、なつの創造力の翼の大きさと広さを的確に描いたと言っても過言でないと思う。そして更に、音声には奥原なつ(粟野咲莉)の歌声が加わり、家族の笑い声も重なり、一度フェードアウトして “なつの夢見心地”が終わる。
なつが、自立心が強く創造力豊かな人物なのを見事に描いた!
が、すぐにハープとクラリネットの優しい劇伴が流れて、今度は未来の奥原なつ(広瀬すず)のモノローグになって、先のアニメーションの説明が入る。そして劇伴にはギターが加わり楽曲のサビに来たところで、なつが泰樹(草刈正雄)の呼び声で現実に引き戻される。
ここまで約4分間。映像は幼少期のなつだけで、俳優は粟野咲莉さんと内村光良さんと広瀬すずさんの演技力に、巧みな映像と音の編集で、しっかりと「奥原なつ」が自立心が強く創造力が豊かな人物なのが十分に分かった秀逸なシーンだと思う。
もう、この直後のなつの「どうして 私には 家族がいないの…!」と泰樹の「もっと怒れ」については、解説するまでも無いだろう…
なつのアイスクリームのアップ直前の「雪月」の行灯…
そして、今回は川辺のシーンの直後の「菓子屋・雪月」のファーストカットに軒先の「雪月」の行灯のカットが使われた。ドラマ上、なつが食べるアイスクリームをどうしても強調したかったのだろう。流石に川辺の直後にアイスクリームでは強引だし、全員の引きのカットの後では印象が弱まる。この辺の編集のさじ加減も今のところは順調だ。
なつが泰樹の夢にどう関わって行くのか、楽しみが増えた
そして、終盤の3分間では、なつが正式に奥原家の一員となった家族としての喜びが描かれ、ラストでは泰樹の「バターチャーンで世界一のバターを作る」と言う夢が語られた。
幾分唐突ではあるが、やはり今作が始まって以来描かれ続けている、なつと泰樹の心の絆の延長線上の物語として、なつが泰樹の夢にどう関わって行くのかと言う楽しみが増えた。そんな第9回だった。
あとがき
今回も、丁寧に奥原家を中心に菓子屋の小畑家の日常を描きつつ、川辺ではシリアスに、雪月ではコミカルにとメリハリをつけ、ラストは上手く次回に繋げました。前作に比べれば殆ど不満はありませんが、敢えて良く出来ているから要望したいのは、あとほんの少しだけ “間” があったら良いかなと。
次々と名シーンが繋がり過ぎて、若干現実味が薄まっているように思うのです。そこで、もう少し個々の芝居の “間” や、シーンとシーンの “間” を作ったら、もっと丁寧さが増すのでは無いかなと思うのです。今後は、その辺りも期待して見て行こうと思います。
因みに、「奥原なつ」と「なつ」の表記を併記したのは、「なつ」だと文章が書きづらく読みづらいと感じた部分で使い分けました。暫く、この手法でやって行きます。
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