カーネーション:再放送 (第11,12回・2018/4/18) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第2週『運命を開く』
『第11,12回』の感想。
※ 私は本作を未見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第11回】
善作(小林薫)は千代(麻生祐未)に実家の松坂家に借金を申し込ませるが、善作自ら来るようにと断られる。糸子(尾野真千子)は善作のお供で神戸の松坂家まで行くことに。糸子がいとこ・勇(渡辺大知)らと楽しんでいる間に、千代の父・清三郎(宝田明)は善作に、時流に合わない呉服店を畳めと言う。結局借金はできず、失意の善作はだんじり小屋を訪れ、泰蔵(須賀貴匡)に、だんじりの上で舞う大工方になれなかった思いを語る。
【第12回】
借金に失敗した善作(小林薫)は、神宮司(石田太郎)の娘の花嫁衣装を用意できず、神宮司に「店を畳むなら早い方がよい」と諭される。糸子(尾野真千子)は女学校の帰り道、いじめられている勘助(尾上寛之)に出くわし、助けようとして逆に相手に負かされてしまう。勘助に背負われて家に帰り着いた糸子は大泣きする。だんじりに乗れず洋裁も禁じられ、男に負けるのが悔しくてならないのだ。善作はその泣き声をじっと聞いていた。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
この2回で、糸子と善作の "しまう" 気持ちが描かれた!
今回は、各日2回ずつの放送だからこその視点で感想を書いてみると、この度の第11回と第12回は、第2週目の金曜日と土曜日にあたる。そんな2回分で描かれたのは、正にドラマが大きく動き出すエピソードだった。
特に私が「なるほど!」と思ったのが、父であり男の善作と娘であり女の糸子の、それぞれの “しまう(本当は「仕舞う」と書きたいのだが、字幕表示が平仮名なので)” が、2回分を通して並列的に描かれたこと。
第11回では、善作が商売を “しまう” 決心をつけようとしていること。第12回では、勘助にまで負けて女と言うプライドを “しまう” ような気持ちになった糸子の気持ちだ。それが明瞭に描かれたのが秀逸だと思う。
なぜ、簪を放り投げた日が "雨と雷" だったのか…
さて、本編に入ろう。第11回の冒頭が “雨” だった。それも雷がなる程の雨。善作と千代の会話の背後に、ず~っと強めの雨音と時々雷が聞こえるシチュエーションだ。なぜ、雨降りにしたんだろう? と考えてみた。
例えばこうだ。実家からは借金を断られ呉服屋の経営が行き詰まりって来ている “実は小心者の善作の荒れた心の中” を表現しているのではないかと考えてみる。すると、どうだろう。一方の千代は実家できれいな簪を貰って上機嫌。そんな千代を見て腹を立てた善作が、その簪を取り上げて窓を開けて外に放り投げるではないか。
あの、簪を放り投げるカットだけ、1カットだけカメラが外にあり、大雨越しの善作とその奥に千代、更に大きな雷と来た。そう、このカットが晴天だったら、どう感じるか? 最初の実家から帰って来た時から想像したら、呑気な千代、善作に愛想をつかした千代が主役になってしまわないか。
でも、雨と雷のお蔭で、このシーンの主役が葛藤している善作になったのだ。と、考えたら面白くないだろうか。
モノローグの中で「夏休み」と言わせたのが、脚本の妙…
そして、場面は夏着物で昼寝をして汗をかいている糸子に、セミの声。糸子のモノローグが無くても「夏」なのは一目瞭然。でも、ここでモノローグの中で「夏休み」と言わせているのが、脚本の妙だ。
だって、誰だって若い頃の「夏休み」や「夏休み明け」には変化がつきものではないか? きっと、糸子にも何らかの変化がもたらされると予想できる仕掛けだ…と思う。もちろん、意気込んで千代の実家に乗り込んで行く善作にも変化があるかも知れないと…。
糸子と善作の対比が面白い!
それにしても、糸子と善作の対比が面白い。舞台が千代の実家の松坂家になっただけで、善作はまるで借りてきた猫が余計に背中を丸めたように小さくなり、一方の糸子はバウムクーヘンの力を借りて更に男前のヒロインになるんだから。
義父に強烈なパンチを食らった善作が、だんじりの前で…
そして、男と男の話し合いのシーンで、この2回分を貫くキーワード “しまう(仕舞う)” が、千代の父・清三郎から発せらる。
清三郎「ええか? 呉服屋という商売が
そもそも もうしまいなんや」
清三郎に強烈なパンチを食らっちまった善作。失意の善作がだんじり小屋を訪れると、そこに泰蔵がいる。
まるで神様が「人間、地に足をつけて生きなさい」と言っているのを描いているかのように、だんじり山車のコマ(車輪)がある足回りを覗き込んでいる印象的なカットで、善作が実はだんじりの上で舞う大工方になれなかったのは「根性が足らんかった」からと当時の思いを語るシーンがあった。
この場面で、善作は一度大きな挫折をしたことが分かった。そして、この日の昼間にまもなく二度目の挫折を味わうことになるのを察した善作が淡々と描かれて、第11回終了した。
神宮司に完全にノックアウトされた善作の描き方が上手い!
そして、第12回。結局、借金に失敗した善作は、神宮司の娘の嫁入り衣装の準備が出来ないことを詫びる。このシーンでも何気なく例のキーワードが、神宮司から発せられる。
神宮司「別の店に頼んだら しまいや。
それよりも あんた どないすんねえん? 店 畳むんか?」
善 作「(ため息)お恥ずかしい話ですけど」
神宮司「うん?」
善 作「まだ…迷てます」
神宮司「ああ。そら 分かる。
けどな…やめるんやったら 早いうちやで」
このやり取りで善作が完全にノックアウト。人生二度目の挫折が決定した。しかし、苦しみぬいている善作は敢えて表現せずに、夏休みが終わり新学期に時間経過を進めた。描く必要など無いのだ。糸子と善作の関係に変化がないまま時間が経過したと言うだけで十分過ぎる。ここで入れたらクドイだけ。だって、本作の主人公は糸子なのだから。
女の誇りと人間の尊厳を粉々にされた糸子…
久し振りにパッチ店のミシンの音に、恍惚の表情を浮かべる糸子が印象的だが、それは長く続けずに、糸子が騒動に巻き込まれる。ここの展開が良いね。第11回と12回の前半で善作の挫折を描いて、後半では糸子の人生初の挫折を描く。尾野真千子さんの迫真の泣きの演技を、これでもか! と言わんばかりのアップで捉えたカットで、あの例のキーワードが登場する。
糸子「うちは だんじりにも乗られへん。
ドレスも着られへん。
ミシンも使えんで…
勘助にまで負けてしもたんや。
もう しまいや!」
女としてのプライド、一人の人間としてのアイデンティティーを粉々にされていく糸子をじっと見つめる善作が実に印象的だ。
先の展開を匂わせるラストの2つのモノローグも良かった!
そして場面は翌朝。これだけで、善作が結論を出すまでにどれだけの時間が掛ったのか分かる。善作が枡谷パッチ店で糸子が修行することを許した。うれしくて堪らない糸子の2つのモノローグが良い。
糸子(M)「お父ちゃんは とにかく
「勉強勉強」を繰り返してました。
けど そん時 うちは まだ 何にも
その意味は 分かってませんでした」
糸子(M)「泰蔵にいちゃん あんな…
うちも うちのだんじり乗れる事になってん。
覚えてるか? ミシンちゅうんやで」
とにかく、この2週間は半年間のプロローグとして、そして「起承転結」の「起」の序盤戦として、とても上手に「だんじり」と言う男性文化を糸子に映して、女性の自立を描いた。お見事としか言いようがない。
あとがき
いやぁ。この2週間の見応えは凄かったです。第3週も、喜怒哀楽に富んだ1週間になりそうですね。
前回の感想に 90回もの Web拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。いやぁ、面白いです。面白いだけに個人的にちょっと辛いのは、午前中に『半分、青い。』の感想を書いて、午後に『カーネーション』を書くと、登場人物の名前がこんがらがってしまうことです(汗)
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【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10
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